一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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オオバノハチジョウシダの幼株、における白斑模様について。

質問者:   一般   mitue@熱海
登録番号1153   登録日:2007-01-11
以前、スルガジョウロウホトトギスの腺毛について質問したものですが又、宜しくお願い致します。
身近(特に市内)な観察をしていてオオバノハチジョウシダの幼株にきれいな白斑模様をしばしばみかけます。日本草本植物総検索誌シダ編には幼株では『斑入りが出ることがある』との記載はあるようですがその理由を知りたいと思ってある掲示板で尋ねたのですがどうもはっきりしないのです。

http://www.wildplants.sakura.ne.jp/joyful/img/739.jpg
上記に画像がありますので宜しくお願い致します。
mitue@熱海さま
 みんなの広場へのご質問有難うございました。頂いたご質問の回答を、斑入りならこの人という、岡山大学の坂本 亘先生にお願いいたしましたところ、以下のような回答をお寄せ下さいました。これまでにも斑入りの質問は多く、坂本先生の回答の中にもありますように、質問コーナーの登録番号727, 登録番号749 でも扱っていますので、これも参考にして下さい。

坂本先生のご回答
斑入りは、遺伝的に起こる場合(突然変異など)と、生理的に起こる場合があ り、今回、ご質問にあるシダの斑入りは、どちらかといえば生理的なように思われます。詳しいことについては、質問コーナーの727,749などに少し触れていますので参考にして下さい。
斑入りの白いところでは、クロロフィルを持った葉緑体ができなくなっているために白くなっています。白く見える部分の細胞には、葉緑体になれない「未分化のプラスチド」という構造体が残ったままか、あるいは葉緑体の数が減少しています。斑が入る理由は、葉緑体の状態が「ある」か「ない」かのどちらかで、その中間の「少しある」状態がないからです。
どうしてそうなるかはわかっていませんが、植物が病原菌の感染や除草剤などでも斑のようになりますから、植物の環境に対する応答とも考えられます。
今回の斑入りも、生育環境による何らかの影響かもしれません。そのような場合は、遺伝しないのでそのうち斑入りはなくなるでしょう。遺伝的な斑入りなら、次の世代にも斑入りが出ると思いますが、また幼植物だけで斑入りが出るかもしれません。
ちなみに、今回ご質問のシダについては、私の研究所で野生植物に詳しい山下純先生に聞いてみました。以下がその回答です。

斑入り品のあるシダとしてよく知られているものに、
ハカタシダArachniodes simplicior (Makino) Ohwi
イヌワラビAthyrium niponicum (Mett.) Hance
マツザカシダPteris nipponica Shieh
ホコシダPteris ensiformis Burm.
イワヒバSelaginella tamariscina (Beauv.) Spring
ヒトツバPyrrosia lingua (Thunb.) Farw.
などがあります。

いずれも野生種で、ハカタシダ、イヌワラビ、マツザカシダの3種は野生の斑入り品を時々見かけます。
ホコシダの斑入りは園芸店で見られます。
イワヒバ、ヒトツバの園芸品種は日本の伝統的な園芸植物として知られ、とくにイワヒバには多様な品種があります。

オオバノハチジョウシダPteris excelsa Gaud.に幾分似ているPterisの別種にも、斑入りの園芸品種がありますが、あまり普通には売っていません。
オオバノハチジョウシダの斑入りは残念ながらまだ見たことがありません。

坂本 亘(岡山大学)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2007-01-25
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