一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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気根について

質問者:   自営業   博行
登録番号1154   登録日:2007-01-13
あけましておめでとうございます。 本年もよろしくお願いいたします。

樹木の中には気根を枝からだして地面に到達したあと太くなって
幹のようになってしまうものもありますが、そこで素朴な疑問が湧いて
きました。
 気根が地面に到達するまでは水分とか栄養とかはみんな枝から気根へ
流れて行くと思うのですが、気根が地面に到達してからは気根から
新しい根を地面に張ってそこから水分を吸収して行くと思うのです。
ならば、気根が地面に到達する前と後では導管での水分の流れは
逆になるのでしょうか? 導管は逆流可能なのでしょうか?
それとも、到達してから新たに導管が作られるのでしょうか?

篩管に関してどうでしょうか?

よろしくお願いいたします。
博行さん:

日本植物生理学会 みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。ご質問は標記の番号で受け付け、回答いたします。
気根とは、地上茎に作られ下方に向かって成長したり垂れ下がったりする根や横走する地中根から地上に向けて顔を出すように成長する根などのように、空中にまず顔を出すように作られる根のことで、ふつう特殊な働きをもっています。ご質問にあるように地上茎からでて地面に到達すると太くなる気根は、インドゴムノキなどに見られる支柱根と呼ばれるものと思われます。タコノキやトウモロコシのように、もともと太い気根を出し、地面に達しても特に太くならない支柱根もありますが、いずれも植物体を支える働きを果たすとともに地中に入れば吸水の機能もあるようです。ご想像のように、地上茎にでた気根の栄養は母体から供給されますが、主に篩管をとおって供給されているはずです。支柱根は空気中から水を吸収する働きがほとんどありませんから道管液も茎から供給されたものですが、導管液の流れは蒸散などで水を損失する組織・器官の方向へ流れます。気根が空中にある間は、気根自体の蒸散による気根内平均浸透圧と、地中根から流れる母体内浸透圧の差で、わずかながら気根へ向かって流れていると考えられます。それがまた、気根成長の原動力となっています。気根が地面に達して、地中の水を吸収するようになれば気根内の浸透圧は低下しますので、地上方向へ向かって流れることになります。地面に達して太くなるような気根は当然、道管、篩管などの維管束やその他の細胞が新たに作られますが、道管、篩管によって内液の流れる方向が決まっているものではありません。道管も篩管も、一本の独立した管ではなく、たくさんの毛細管がお互いに連絡し合っていますので、毛細管の中の水は水の化学エネルギーの小さい方向(浸透圧の大きい方向)へと流れます。
道管内でも篩管内でも水の流れる方向はこの原理で決まります。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2007-01-18
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