一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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オオムギの発芽

質問者:   教員   フォレスト
登録番号1158   登録日:2007-01-17
多くの植物の発芽では、先ず根が出てから芽が出ているが、イネでは、先ず芽がでてから、そのすぐ下側から根が出ることが「イネの一生」(「科学のアルバム、あかね書房)の写真で出ていました。大麦もイネの種子と同じような胚の位置であるので、先に芽が出て、その後その下付近から根が出るのかとも思ったが、インターネットで「オオムギ、発芽」で検索していると、オオムギの発芽の写真が出ていて、それには根が先に出て、その後芽が種子の根が出たの反対側から芽が出ている写真が載っていました。
 オオムギの種子の発芽では、芽と根のどちらが先に出るのですか?また、芽と根の出る位置が種子の一端からではなく、根が種子の左先端からなら、芽が右先端から出るというのは本当でしょうか?なぜ、イネの種子と同じような胚の位置にありながら、このように違っているのですか?
 高等学校の生物の授業でジベレリンの働きで「オオムギの発芽」を説明していたのですが、この点が分かりませんので、恐れ入りますが教えていただけませんでしょうか。よろしくお願いいたします。
フォレスト様

植物の形態や成長の仕方はそれぞれの植物にとって生態的に適応したものです。もっとも、栽培植物は大きく変えられているのがふつうです。イネの種子では幼芽から伸び始めるのは、イネがもともと水性植物であるからかもしれません。発芽の時、最初に本葉を包む葉鞘が伸長します。播種してから大体30時間位で胚の部分が膨らみはじめ、48時間ほどで幼芽(葉鞘)がもみを破って現れます。この状態を一般に発芽と呼んでいます。幼根はそれより約1日遅れて、幼芽の付け根近くからあらわれ、はじめ幼芽と直角方向へ突出しますが、すぐ下方(葉鞘と逆の方向)へ伸びていきます。イネの種子を深い水深のところで発芽させると、酸素不足のため幼根はほとんど伸びず、本葉の伸長も抑えられて、葉鞘だけが長くのびます。他方オオムギの場合ははじめに幼根が伸長を始めます。コムギやトウモロコシの場合も同じです。オオムギ種子の幼根と幼芽の伸びる方向と位置ですが、種子をどのようなPOSITIONに置くかで一方が右端で、他方が左端もありえますし、その逆もあります。種子の発芽は種子の胚が成長を開始することです。だから、胚がどのような形をしており、種子のどの部分に位置しているかで方向が決まります。オオムギの種子では、胚は種子を横に置いた時、どちらかの側かの端に斜めにくっついています。婦人のつばのない帽子かベレー帽を額から頭にかけて被ったようなとでもいったらよいでしょう。イネの種子の胚でも同じですが、胚の大きさは小型です。イネでは胚中の幼根は葉鞘(幼芽)の方向に対してほぼ直角に位置していますから、幼根はまず直角に伸びるのです。しかし、根は正の重力屈性により、下方へ曲がります。これに対してオオムギの種子胚では幼芽と幼根はほぼ垂直に配置されています。したがって、発芽のとき幼根と幼芽ははじめから逆方向へ伸び始めます。オオムギ種子を胚の部分が横になるように置けば、両者は右左に別れて伸びることになります。しかし、すぐ、重力屈性で根は重力方向に、芽は反対の方向へと成長します。くどくど書きましたが、大体お分かりになったことと思います。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2007-01-18
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