一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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桜の花芽形成について

質問者:   大学生   智子
登録番号1170   登録日:2007-01-26
高校の生物で花芽形成について習ったときから疑問に思っておりました。
フロリゲンについては様々な議論がなされておりますが、「葉で光を感じることが花芽形成のきっかけである」といった記述をよく目にします。
しかし、桜のように、花が咲いた後に葉が出る植物もあります。そういった植物は、何が花芽形成のきっかけをつくっているのでしょうか?
「桜前線」という言葉がありますが、花芽形成に温度は関係ないのでしょうか?

解答お願い致します。
智子 さん:

日本植物生理学会 みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。ご質問(1170)は、サクラをご専門に研究しておられる森林総合研究所の勝木俊雄先生に回答をお願いしました。サクラの花芽が形成される時期は分かっていますが、何がきっかけで花芽が形成されるかは、まだ分かっていないようです。でも、葉が重要な働きをしていることは確かです。

まず質問の「花が咲いた後に葉が出る植物」の場合、いつ花芽を形成しているのか考えてみましょう。当たり前の話ですが、種子から発芽して、先に花をつけて、その後に葉をつける植物はありません。まず葉をだし、花を咲かせ、実を付けてから、葉を落とします(落葉樹の場合)。そして、また葉をつけるというサイクルになります。
サクラの場合も、前年の夏に花芽を形成し、冬には休眠して、翌春に花を咲かせるということをしています。もっとも夏にどういったきっかけでサクラが花芽をつくるのかはよく判っていません。この段階で日長が関係していることも考えられますが、'染井吉野'では6月にすでに花芽の形成は始まっているという報告もありますので、単純な短日植物でないことは確かなようです。また、花芽の分化に温度が関係しているとも考えられますが、詳細な関係は調べられていないようです。ちなみに10月ごろに'染井吉野'が咲く「狂い咲き」という現象がありますが、これはこの時期までに花芽が形成されていた証拠です。「狂い咲き」は花芽が形成された後、きちんと休眠していないときに気温が上昇して咲くのです。なお、きちんと休眠状態になった花芽は冬の低温期に休眠が破れます。休眠が終わった花芽は温度が上昇すれば開花しますので、春になって気温の上昇が南から北上するためにサクラの開花も北上することになります。これが桜前線とよばれているのです。

勝木 俊雄(森林総合研究所)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2007-02-05
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