一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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葉の色のつき方について

質問者:   一般   クリビア
登録番号1177   登録日:2007-01-31
クンシランの品種(?通称かもしれません)に「曙」があります。特徴として、新しく展開してきた葉が白く、葉先から株元に向かってだんだんと緑になっていき、古い葉はほとんど緑色になります。植物学的にこのような形質はなんと呼ばれているのでしょうか?
また、このような色の付き方をするメカニズムもしくは原因遺伝子等がわかっていましたら教えてください。
趣味家の間で、100%母性遺伝し、まれに父性遺伝すると言われています。
斑入りとは違うような気がしましたので、質問させて頂きました。
ご回答よろしくお願いいたします。
クリビアさま

みんなの広場へのご質問有難うございました。クリビアさまは斑入りとは違うような気がするとお考えのようでしたが、まずは、斑入りの専門家の岡山大学の坂本 亘先生に回答をお願いしましたところ、以下のような回答をお寄せ下さいました。やはり、どうも斑入りのようです。ご回答、ご検討下さい。

坂本 亘先生のご回答

ご質問にあるクンシランの形質は、ヴィレッセント (virescent)と呼ばれる一群の変異ではないかと思います。
遺伝学的には、最初はアルビノ(白子)のように真っ白な葉が出てくるが、時間とともに緑に回復して正常な緑葉になる場合、ヴィレッセントと呼びます。単子葉、双子葉植物ともに見られますが、例えばイネなどの単子葉でヴィレッセント変異は比較的多く知られています。変異が低温感受性である場合も知られており、イネの場合は昼夜の温度に反応して緑になったり白くなったりする横縞の苗になるものもあります。ちなみにこれはゼブラと呼ばれ、見た目は変わった斑入りのようになります。
このようなヴィレッセント形質は、葉緑体の分化や発達に遅れが生じるためではないかと考えられています。葉緑体を作るための遺伝子発現装置に弱い変異が入ると、それが「遅れ」となって現れるということです。葉緑体は独自のDNAを持っているので、そこに変異があればヴィレッセントになる可能性は十分考えられ、その場合は母性遺伝するでしょう。前述のように、このようなヴィレッセント変異は往々にして温度・光などの影響を受けるので、場合によっては斑入りに葉にみえることもあります。
ヴィレッセントの原因遺伝子は明らかにされた例もありますが、母性遺伝の例は知りません。葉緑体の発達に関わる様々な弱い変異、つまり致死にはならない変異が、ヴィレッセントに関係するようです。
「斑入り」を厳密に定義することは難しいですが、同じ組織に異なる色が生じる場合、斑入りといいます。ヴィレッセント変異は、「空間的に見た」斑入りに「時間的要素」を加えた場合なので、広い意味では斑入りとも言えるでしょう。斑の種類については、山口県在住の広瀬嘉道さんが出版された「斑入り植物集」に若干紹介されていますが、ここにはヴィレッセントはありません。斑入りの原因については、他の回答にありますので、そちらを参考にして下さい。
なお、葉緑体の遺伝子は殆どの植物で母性遺伝しますが、種によっては父方から遺伝することもあります(両性遺伝するが、どちらか一方のみから遺伝し、混ざることはありません)。

坂本 亘(岡山大学)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2007-02-09
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