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キャビテーションと枝枯れについて

質問者:   自営業   星の王子様
登録番号1187   登録日:2007-02-07
 庭木(モッコク)を梅雨明けに強剪定しました。秋になって勢いが衰えてきたので枝の上側を見ると日焼けを起こしたように色が変わっていました。その年は夏に乾燥が続いた年で、水分不足と日焼けで、導管に空気が入るキャビテーションが起こって枝が変色したり樹勢が衰えたりしたのかな・・・と思っていました。
 マツノザイセンチュウ病は、センチュウによってキャビテーションが発生すると、元に戻ることなくこの症状が爆発的に進行するので、松はたちどころに枯れてしまう・・・と本で読んだことがありますが、広葉樹(常緑樹、落葉樹)でもこのキャビテーションによって枝枯れが発生したり、樹勢が衰えたりすることがあるのでしょうか?又、キャビテーションの発生しやすい樹木、しにくい樹木と言った区別があるのでしょうか?よろしくお願いします。
星の王子様さま

大変ながいことお待たせしてしまい申しわけございませんでした。何人かの先生にお願いしたのですが、まったく応答して頂けず、ようやくこの度、東京大学の寺島一郎先生から以下のような回答を頂くことが出来ました。お役に立つと思います。

寺島先生からの回答

キャビテーションは蒸散が盛んな時に生じます。土壌が乾燥し、空気も乾燥しているときには、盛んに蒸散している植物の導管や仮導管のなかの水は上下に強く引っ張られています(あるいは陰圧がかかっているといってもよい)。ある枝の導(道)管(道)や仮導管にキャビテーションが起こって修復されないと、その枝に水を供給する通導組織が減ることになります。そうすると残りの導管や仮導管にますます負担がかかり、キャビテーションが起こりやすくなります。
このようにある枝にいったんキャビテーションが起こり始めると次々とキャビテーションが起こり(フィードバックの逆のフィードフォワード)、修復が起こらないような厳しい条件ではその枝は枯れてしまいます。このような仕組みは、樹木にストレスがかかった時に、特定の枝を切り捨てて全体が生き残る戦略として理解されています。主幹から枝が別れる際に導管や仮導管の径が狭くなっていて、個々の枝は独立した存在となっているのでできることです。単純なイメージとしては、「主幹という容れ物に独立した存在である各枝が植え込まれている」という感じです。

同じ長さの導管や仮導管の両端に、一定の圧力差をかけると、水が流れますが、流れる量は直径の4乗に比例します。直径の大きい導管の方が水の通導という面では有利です。しかしよいことばかりではなく、太い方が水が切れやすいという明らかな傾向があります。針葉樹をふくむ裸子植物には導管をもたず、通導組織はすべて仮導管によって成り立っています。仮導管は細く、キャビテーションが起こりにくいのですが、通導の効率が悪いため、一定の水を流すためには、材の殆どを仮導管にしなければなりません。

キャビテーションは、導(道)管や仮導管の中の水が凍結し融解した際にも起こります。この場合にも細い針葉樹ではキャビテーションが起こりにくいようです?たがって、冬が厳しい地方では、葉を落として蒸散をしないようにする落葉樹か針葉樹しか分布できません。例外的に分布する常緑広葉樹は細い導管を沢山持つので茎が太い傾向があります(イヌツゲなど)。

詳しくは、

舘野正樹 (2003)器官間のバランスと成長:茎と根から陸上植物の生活を理解する  村岡裕由・可知直毅 編集 「光と水と植物のかたち」 文一総合出版

などをお読みください。

寺島 一郎(東京大学)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2007-03-06
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