一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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シダの表皮の葉緑体

質問者:   大学院生   古男
登録番号1189   登録日:2007-02-08
植物の表皮には、孔辺細胞以外に葉緑体は存在しないと思っていましたが、最近、シダ類には表皮細胞内にも葉緑体が存在することがあるということを聞きました。
そこで質問です。
1.シダ類のうち、表皮細胞内に葉緑体が存在することがわかっている種にはどんなものがあるでしょうか?
2.特に、葉緑体運動等の研究によく用いられているアジアンタム、あるいはボストンタマシダの表皮細胞内には、葉緑体が存在するでしょうか?
3.表皮細胞内の葉緑体の色素成分や機能についての知見は既にあるのでしょうか?例)酵素活性、クロロフィルa/b 等
4.表皮細胞内に葉緑体が存在することについて、進化学的な考察はされているでしょうか?
古男 様

本コーナーに質問をお寄せくださりありがとうございました。
ご質問には、シダを材料にして葉緑体運動について研究されている基礎生物学研究所の和田正三先生から以下のような回答をいただきました。ご参考にしてください。なお、この問題に関連して、植物の発生過程における表皮細胞の分化について考えてみるのは如何でしょうか。

私はシダを使用して研究をしていますが、シダの専門家ではないので詳しいことはわかりません。わかる範囲でお答えしますが、詳細はご自分で調べてはいかがでしょうか。一番簡単な調べ方は下記のgoogle scholarのアドレスhttp://scholar.google.com/ でkey wordsを入れて関連の論文を探してみるということでしょう。さらに知りたければご自分で実験をされることだと思います。

私がホウライシダ胞子体の葉で調べたかぎりでは、表皮細胞には葉緑体があります。他のシダを観察したことがないのでわかりませんが、一般的にいわゆる大葉類のシダ類は同じようになっていると思います。Selaginella表皮細胞でも葉緑体運動が観察されていますから、多分リュウビンタイなど下等なシダの表皮細胞にも葉緑体はあると思います。興味があればご自分で切片を作って観察されるのが最も確実だと思います。

しかし表皮細胞だけの葉緑体や色素体を分離するのは簡単ではありません。したがって表皮細胞の葉緑体を単離して特性を調べた実験はないと思います。

表皮細胞に葉緑体があるのは、Vallisneriaなど水生の高等植物にも見られる現象ですから、特にシダに限ったことではありません。シダとVallisneriaは全く関係がありませんので、進化的に結びつけることはできません。何か環境によってこのような進化をしたのかもしれませんが、どう解釈されているかは知りません。

和田 正三(基礎生物学研究所)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤公行
回答日:2007-02-20
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