質問者:
教員
タカサン
登録番号1191
登録日:2007-02-13
タマネギの発根実験をしています。みんなのひろば
タマネギの発根について
4月はじめに、冷蔵庫に入れて、低温処理した後、水栽培するのですが、そのときにタマネギの上部を切断してわざと傷つけたものと傷つけないもので差が出るかをためしています。(新タマネギが出ると発根がうまくいかないのでこの時期にしています。)傷ついたほうが早く発根するのではないかと予想を立てて実施したのですが、あまりはっきりした差異はないような結果になりました。
この実験では植物生理的にどのホルモンがどのような形で作用しているのでしょうか。教えてください。また参考になるような文献があればお教えください。
タカサンさま
みんなの広場へのご質問有難うございました。担当の柴岡と申します。このコーナーを見て下さる方の為に、タマネギの一生について簡単に書かせて頂きます。タマネギは秋に植え付けて、初夏に収穫しますが、冬を越す間というか短日条件下(夜が長い)では普通のネギのように細長い形をしています。それが品種にもよりますが3月から5月という長日条件(夜が短い)になりますと葉の付け根が膨らんで来てタマ(鱗茎)を作るようになります。タマができるとタマは休眠に入り、夏の間は休眠をしています。新タマネギは4月には休眠中です。休眠はそれほど長くなく50日ほどで醒め、芽が伸び始めます。しかし、芽の生長はゆっくりで、芽の先端が外にでてくるのはその1カ月後くらいですので、休眠から醒めたかどうかはすぐには気がつきません。実験に使われているタマネギが前年収穫のものであれば既に休眠から醒めているいるものと思われますので、冷蔵庫に入れて低温処理するのが休眠打破を目的としたものだとすると、意味がないことになります。さて実験に入りましょう。上部を切断してとありますが、上部とはタマから出て来た青い葉の部分のことでしょうか。もしそうだとすると、葉の先端を切ったことになりますが、葉は付け根の部分で分裂をして葉の新しい部分を作っているので、切った効果はなくて当たり前だと思います。ここで、タマネギと植物ホルモンの関係に付いてのこれまでの研究を概観して見ましょう。過去に良く研究されたのはタマ形成におけるホルモンの役割りで、まずオーキシンが研究対象になり、オーキシンが関わっているいるとの報告も出されましたが、現在では否定されています。
次に調べられたのでエチレンで、実際には植物に与えるとエチレンを生成するエタホンという薬剤を与える実験がされました。エタホンはタマ形成の時期を早めますが、効果は長続きせず、出来たタマは無処理のものより小さく、エチレンもタマ形成誘導物質ではないとされています。はっきりしているのはジベレリンで、タマ形成を阻害します。またジベレリン合成を阻害するウニコナゾールという薬品を処理しますと、タマ形成が起きますので、タマネギ自身が作っているジベレリンがタマ形成を抑制していると考えられます。ジャガイモのイモ(塊茎)形成を誘導する物質の仲間のジャスモン酸についてはタマ形成促進作用が見られ、また長日条件でやがてタマになる葉鞘中のジャスモン酸が3倍に増えることが報告されていますが、葉鞘の中にあるジャスモン酸の量は、与えた時タマ形成を誘導する濃度の1000分の1くらいなので、これもタマ形成ホルモンとはいえないようです。結局のところタマ形成を誘導する物質はまだ分っていないということになります。長日条件にすると増えるホルモンにアブシジン酸がありますが、これは休眠に関係するホルモンです。タマネギで発根実験を為さっておられると書かれていますが、すでにタマネギに用意されている根の原基の生長実験だと思います。根全体に外からオーキシンを与えると根の生長は阻害されますが、根を切って、基部側からオーキシンを与えると根の生長は促進されます。ということで、葉から根に送られるオーキシンは根の生長を促していると考えられます。
根の生長とホルモンについての参考書を探したのですが、新しいものは見付かりません。古い文献ですと、植物の化学調節23巻(1988)、34巻(1999)に谷本英一さんの総説があります。また、私は見たことがないのですが、朝倉書店(1998)から「根の事典」という本が出ているそうです。
みんなの広場へのご質問有難うございました。担当の柴岡と申します。このコーナーを見て下さる方の為に、タマネギの一生について簡単に書かせて頂きます。タマネギは秋に植え付けて、初夏に収穫しますが、冬を越す間というか短日条件下(夜が長い)では普通のネギのように細長い形をしています。それが品種にもよりますが3月から5月という長日条件(夜が短い)になりますと葉の付け根が膨らんで来てタマ(鱗茎)を作るようになります。タマができるとタマは休眠に入り、夏の間は休眠をしています。新タマネギは4月には休眠中です。休眠はそれほど長くなく50日ほどで醒め、芽が伸び始めます。しかし、芽の生長はゆっくりで、芽の先端が外にでてくるのはその1カ月後くらいですので、休眠から醒めたかどうかはすぐには気がつきません。実験に使われているタマネギが前年収穫のものであれば既に休眠から醒めているいるものと思われますので、冷蔵庫に入れて低温処理するのが休眠打破を目的としたものだとすると、意味がないことになります。さて実験に入りましょう。上部を切断してとありますが、上部とはタマから出て来た青い葉の部分のことでしょうか。もしそうだとすると、葉の先端を切ったことになりますが、葉は付け根の部分で分裂をして葉の新しい部分を作っているので、切った効果はなくて当たり前だと思います。ここで、タマネギと植物ホルモンの関係に付いてのこれまでの研究を概観して見ましょう。過去に良く研究されたのはタマ形成におけるホルモンの役割りで、まずオーキシンが研究対象になり、オーキシンが関わっているいるとの報告も出されましたが、現在では否定されています。
次に調べられたのでエチレンで、実際には植物に与えるとエチレンを生成するエタホンという薬剤を与える実験がされました。エタホンはタマ形成の時期を早めますが、効果は長続きせず、出来たタマは無処理のものより小さく、エチレンもタマ形成誘導物質ではないとされています。はっきりしているのはジベレリンで、タマ形成を阻害します。またジベレリン合成を阻害するウニコナゾールという薬品を処理しますと、タマ形成が起きますので、タマネギ自身が作っているジベレリンがタマ形成を抑制していると考えられます。ジャガイモのイモ(塊茎)形成を誘導する物質の仲間のジャスモン酸についてはタマ形成促進作用が見られ、また長日条件でやがてタマになる葉鞘中のジャスモン酸が3倍に増えることが報告されていますが、葉鞘の中にあるジャスモン酸の量は、与えた時タマ形成を誘導する濃度の1000分の1くらいなので、これもタマ形成ホルモンとはいえないようです。結局のところタマ形成を誘導する物質はまだ分っていないということになります。長日条件にすると増えるホルモンにアブシジン酸がありますが、これは休眠に関係するホルモンです。タマネギで発根実験を為さっておられると書かれていますが、すでにタマネギに用意されている根の原基の生長実験だと思います。根全体に外からオーキシンを与えると根の生長は阻害されますが、根を切って、基部側からオーキシンを与えると根の生長は促進されます。ということで、葉から根に送られるオーキシンは根の生長を促していると考えられます。
根の生長とホルモンについての参考書を探したのですが、新しいものは見付かりません。古い文献ですと、植物の化学調節23巻(1988)、34巻(1999)に谷本英一さんの総説があります。また、私は見たことがないのですが、朝倉書店(1998)から「根の事典」という本が出ているそうです。
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2007-02-24
柴岡 弘郎
回答日:2007-02-24