一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ブナの根開き

質問者:   中学生   光代
登録番号1193   登録日:2007-02-20
ブナの根元は春になると、根元を中心に丸く雪が溶けます。そのことを「ブナの根開き」というようですが詳しいことを教えてください。よろしくお願いします。
光代様

いい質問ですね。ふつう見なれていることでも、「なぜかな?」と疑問をもつと、分からないことが多いものです。

「ブナの根開き」は、雪国地方のブナ林で見られる春の美しい景色ですね。写真の題材としても好まれるようです。ところで、このような現象はブナに限っ たことではありません。シラカバなど他の樹木でもみられます。ただ「根開き」といっています。雪が樹の幹の周りで溶けるのは、当然そこだけ温度が高いからですね。つまり、幹を中心に円状に雪解けが起っているということは、熱の源は幹でしょう。ではなぜ幹は温度が高いのでしょうか。植物の体温はふつう外気の温度の変化につれてかわります。もっとも、ある種の植物、たとえば、寒冷地に生育するザゼンソウは、氷点下付近の温度でも、体温を20℃位に保つことができます。これはザゼンソウ自らが発熱の仕組みをもっているからです。もし、ブナなどにそのような仕組みがあり、幹の温度が高く維持されて いるとすれば、「根開き」は別に春に特有な現象でなくてもいいはずですね。厳冬に積雪があっても、その後雪止んでしまえば、幹の周りから雪が溶け始め てもよいでしょう。しかし、「根開き」は春になって、暖かな日差しが続くようになるとみられるものです。ということは、春になると、何らかの理由で幹 の温度が上昇するのでしょう。では、その仕組みはどうなっているのでしょうか。残念ながら、特別に実験をして調べたという報告があるかどうか分かりま せん。しかし、次のように考えられます。幹が暖められる原因は、外からと体内からとの両方があるのかもしれません。暖かな陽光が樹の根元を照らすよう になると、幹は直接降り注ぐ大陽熱で暖められるばかりでなく、周囲の白雪で反射された光も受けて暖められると考えられます。また、この時期になると、 地下深くに張った根から水が吸い上げられはじめ、地上部の枝の越冬芽が芽吹きはじめるのを助け始めます。この水の移動自体が体内温度の上昇に多少は貢 献しているかもしれません。いずれにしても、樹の幹、特に根元近くは、中はみずみずしくなっているはずです。このことが大陽光の照射による幹内部の温 度の上昇を助けているのでしょう。

これからも、自然現象に「なぜかな?」という気持ちをもって観察するようにして下さい。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2007-02-24
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