一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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植物の気温低下効果の実態は?

質問者:   自営業   ookubo
登録番号1206   登録日:2007-03-11
地球温暖化を危惧し、その真の原因と対策を考えています。
いろいろ調べているうちに、植物には地球(大気)の気温を下げる効果があるという情報を得ましたが、その具体的なことがわからないため質問させていただきます。

1、本当に大気温度を下げる効果があるのでしょうか?
2、あるとしたら、地球温暖化に対して、地球上でどのぐらいの(例えば年間で0,1度とか)下げる効果があるのでしょうか?
3、あるとしたら、どのような仕組み(メカニズムと言いましょうか)で、気温低下に至るのでしょうか?

お忙しい中、ご面倒をおかけいたしますが、よろしくお願いいたします。
ookuboさま

地球温暖化が植物によってどの程度まで抑えられるかについてのご質問ですが、どれだけの植物が生えれば、地球の平均気温が何度、低くさせることができるかの第2問は簡単にはお答えできません。
最近のゴアーの映画、書籍“不都合な真実”(講談社、2007)にありますように、地球が少しずつ温暖化しているのは疑う余地はありません。これが大気中の二酸化炭素(CO2)の濃度上昇によることも明らかで、20万年以上前から19世紀の中ごろまで270 ppm (0.027%)に保たれていた大気CO2が現在では370 ppm以上にまで増加しています(1.4倍)。CO2は赤外光を吸収するため、大気CO2濃度が上昇するにつれ太陽光(赤外光、可視光)によって温められた地球の熱が赤外光として宇宙空間に放散されにくくなり、これが地球温暖化の原因になっています。CO2以外の微量大気成分、例えばメタンなどもこの効果がありますが、地球温暖化の原因となっている大気成分は主にCO2です。

19世紀の中ごろまで少なくとも20万年の間、大気CO2が一定の値(270ppm)に保たれていたのは、植物の光合成によるCO2固定量と、植物以外のすべての生物が呼吸によって排出するCO2量とがほぼ等しくバランスを保っていたためです。しかし、19世紀の中期以降、石油、石炭の使用(燃焼)量が増加してCO2が大気に放出され、それに見合うだけの植物光合成が増加しなかったのが、大気CO2濃度が増加した原因です。さらに, 農耕地の拡大、焼畑農業などのため、植物光合成の主役である森林が一部破壊されてきたのも、大気CO2濃度が高くなってきたもう一つの原因です。従って、植物光合成によるCO2固定を増加させることは、化石燃料をできるだけ消費しないようにしてCO2の放出を抑制することと共に、地球温暖化を防ぐ上で非常に重要です。
 
これまで本質問コーナーで、地球温暖化と植物光合成との関係について、質問番号0875の回答に一般的な事柄がまとめられています。また、草地、森林の光合成について、海洋生物の光合成について、さらに、農耕地の光合成について、それぞれ登録番号0421, 登録番号1157, 登録番号1122の回答に、面積あたりのCO2固定量が示されています。大気 CO2を吸収固定し、それが樹木の形で長期間、保持されるため、森林による光合成が大気CO2濃度の低下させるために効果的であり、従って地球温暖化を防ぐ上で最も有効です。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2012-08-25
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