一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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「指標植物」について

質問者:   一般   藤田 典
登録番号1209   登録日:2007-03-12
古代人が一体どのようにして各種金属の鉱脈を探していたのか--そんな疑問からWEBで資料を探していた時「指標植物」という単語に出会いました。
特定の金属(鉱脈)の近くに集中して繁茂する植物、そのようなモノが実際に存在するのでしょうか?ご教授ください。
藤田 典 さん:

お待たせしました。指標植物に関するご質問は国立環境研究所の中嶋信美先生に回答をお願いしましたら、次のような解説をいただきました。特定金属鉱脈の確実な指標植物部が見つかればすばらしいことですが、難しいことでしょう。

高価な測定機器による観測を行わなくても、「その場の環境を特徴づける植物」を指標植物と言います。「指標植物」で良く知られているのは、気候の指標植物です。例えばエゾマツなどの針葉樹が優占種となっている場所があれば気象観測を行わなくても「亜寒帯気候」であると容易に判断できます。水環境では車軸藻類が見つかれば(必ずしも優占種でなくてもよい)きれいな水環境で、アオコが繁茂すると富栄養化が進んでいると判断できます。このように指標植物を見つけることで、その場の環境がどのようになっているのかを判断できます。また、大気汚染の度合いを簡便に調べるためにアサガオが使われています。アサガオの一品種であるスカーレットオハラは栽培しやすく、大気汚染に非常に弱い植物です。これを各地で栽培し、葉の枯れ具合を調べることで、高価な測定器を用いずに大気汚染の分布を調べることができます。
このように、その場の環境の特徴を調べるために、元々その場に生育していない植物を人が栽培して利用している場合も「指標植物」と呼ばれています。
さて、前置きが長くなりましたが、特定の金属を好んで吸収蓄積する植物があります。例えば、レンゲはセレンを、最近の調査ではハクサンハタザオというアブラナ科の野草がカドミウムや亜鉛を多量に蓄積することが知られています。また、鉱脈近くに繁茂する植物ですが、古くからヘビノネゴザ(Athyrium yokoscense)というシダ植物が知られています。この植物は重金属汚染にとても強いために、他の植物が生育できないような高濃度の重金属汚染土壌であっても生育できます。従って、鉱山でよく見られるために「カナヤマシダ」という異名もあるくらいです。残念なことに、ヘビノネゴザが生育しているからといって必ず金の鉱脈が近くにあるわけではなく、可能性がやや高いといった程度のものです。最近の研究ではヘビノネゴザはヒ素を非常に良く吸収することがわかったので、土壌中のヒ素汚染の浄化に利用されていて、米国で特許が取得されています。

中嶋 信美(国立環境研究所) 
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2007-04-10
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