一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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サボテンの培養について

質問者:   高校生   おたね
登録番号1216   登録日:2007-03-21
以前、サボテンと洋ラン、ナスの種を試験管(ハイポネックス培地)に無菌播種した経験がありますが、よくもこのような狭い密閉された空間で育つものだと感心しました。また生長がずいぶんゆっくりだと感じました。後で植物にはC3、C4、CAMなどさまざまな光合成の方法があることを知りました。これらの植物も培養されていると思いますが、光合成の違いによって試験管内の生育や管理法に違いはあるのでしょうか?また外気が入らない試験管の中ではC3、C4、CAM植物のなかで比較的耐えられる(この環境にむいている)植物はどれでしょうか?私はCAM植物のサボテンが気に入っているので、今後また試験管での栽培に挑戦しようと思っていますが、どんなことに気をつければよいかアドバイスもお願いします。
おたね さま

 植物は二酸化炭素(CO2)を光合成によって固定し、それによって生ずる有機物を基として成長しています。従って、有機物を培地に加える必要はありませんが、ハイポネックスに含まれている(恐らく14種類の)無機養分とCO2、適当な光を受けていれば成長することができます。これはCO2の固定様式がC3, C4, CAMのいずれの植物であっても基本的に同じです。従って、密閉された試験管の中では、CO2が光合成によって吸収されてしまうと、外からCO2が供給されない限り光合成を続けることができなくなり、成長ができなくなります。C4, CAM 植物はC3植物に比べCO2濃度が低くなってもCO2固定ができる点では、閉鎖系では少し長い間、光合成を続けることができますが、しかしCO2濃度がゼロに近づけばC3植物と同様に光合成ができなくなります。閉鎖系では、光合成によってCO2が吸収され尽くしてしまうと、CO2は植物体の呼吸によって排出される量のみによってしか供給されなくなり、当然、成長することはできません。
 従って、閉鎖系での植物の成長はCO2の供給が充分であるかどうかによって決まるでしょう。今までの経験から、成長がゆっくりしていたとのことですが、他の培養条件(温度、光の照度、培地の組成、濃度、pH、培地の交換回数)が適当であれば、その第一の原因はCO2の不足にあるように思います。そのほか、培地を攪拌しなければ、根の成長に必要な酸素が根に供給されにくいため無機養分が充分に吸収されず、これも成長を抑えます。サボテンの栽培を試そうとされているようですが、成長の速さがC3, C4植物に比べて一般的に遅いことに、留意することが必要でしょう。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2007-03-26
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