一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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花弁とがくの違いについて

質問者:   自営業   yamazaru
登録番号1219   登録日:2007-03-26
植物観察が好きで、よく野山歩きをしています。
花の中ではアジサイなどのように、花弁ではなく、がく片が花弁状に見えるものがたくさんあります。
そこで質問ですが、花弁とがくの違いはどこにあるのでしょうか。
図鑑などで調べたのですが、納得できるものはなかったので、よろしくお願いします。
花弁と萼片の違いに関する質問には、東京大学の塚谷裕一先生から分かりやすい回答をいただきました。花を作っている器官が、同心円状に並んでいて、何番目の輪の器官が美しい花びらになるかということのようです。植物の形作りも、簡単のようで難しい仕組みになっていますね。

yamazaru様

ご質問、拝見しました。花弁と萼片の違いについて、納得のいく説明ですか、難しいですね。一般論から言うと、花は内側から外に向かって、雌しべ、雄しべ、花弁、萼片、そして場合によっては苞という順番 で器官が並んでいます。ですので、雄しべのすぐ外にある器官が花弁で、そのさらに外にある器官が萼片ということになります。
ご質問の例にあったアジサイで言えば、花の中心をよく見ると、雌しべも雄しべもあって、そのすぐ外に小さい器官がありますね。ですからその小さいのが花弁で、さらにその外にある大きい器官は、これは萼片ということになります。そう考えると、そのさらに外にはもう花の柄しかないので、矛盾がありません。
またハナミズキの例で言えば、よく中心から見ると、たくさんの粒状の花が集まっている(花序といいます)その外に、赤や白の大きな器官が並んでいるのがお分かりでしょう。複数の花を包む萼片や花弁はないので(これは1つ1つの花にあるものですね)、この赤や白の器官は、苞ということになります。
花弁のように見えるけれど萼片、とか、花弁のようだけど苞、という話は、こういうふうに考えると、だいたい簡単に解決します。ではなぜ最初に、「難しいですね」とお答えしたかというと、それは判断に困る例もあるからです。キンポウゲ属の花のように、雄しべが花弁あるいは蜜腺のように変化した例などもあって、一見したのでは間違うこともあります。あるいは典型的なのはドクダミですね。あの白い器官は、普通は苞ということになっています。しかし異論もあって、小さい花が集 まった棒状の花序の一番下にある花が、例外的に花弁を発達させたのだ、という解釈もあります。専門の世界でも議論になるくらいですから、「納得のいく説明」というわけには、なかなかならないのです。それが、正直なところと言えましょう。ただ、最近は、花弁や萼片を特徴づける遺伝子の働きも分かってきているので、だんだんそのへんももう少しすっきりした話になってくることでしょう。植物学の進展を、少々お待ち下さい。

塚谷 裕一(東京大学大学院・理学系研究科教授)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2007-04-10