一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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光障害

質問者:   公務員   HGM
登録番号1222   登録日:2007-04-01
 周辺が水田に囲まれた地域へのコンビニ出店に際し、光障害の影響を考慮する必要がある、というような文書を目にしました。これまで光障害など気にしたこともなく、初めて聞いた用語だったのですが、調べてみると、光合成の明反応で生じた化学エネルギーの未消費により、有害な活性酸素が産出され光合成装置を破壊するために起こるとか(間違った理解かも知れません)。
 では、どのような農作物が光障害に対する感受性が強い(弱い)のでしょうか。そして水稲は果たしてコンビニの明かりによって影響を受けるのでしょうか。光源からの距離や明るさの基準の様なものがあれば合わせて教えていただきたいと思います。
HGM 様

部屋の中で育てられた鉢植え植物を、日射しが強くなってから屋外に移すと、葉が褐変してしまうことがありますね。これは、クロロフィルなどの光合成色素が吸収した光エネルギーが過剰(未消費?)になるため光合成装置が破壊されたことを示すもので、ご質問に書かれている“光障害”に相当するものです。一般的に言って、光合成の“光障害(または光阻害)”が問題になるのは、光合成が光飽和に達するときで、温度などの他の条件もかかわってきますが、強力な昼間の太陽光にさらされるような条件下においてです。ここで言及されている夜間照明の強さは昼間の太陽光に比べると桁違いに弱いものです(広告塔が明るくなり始めるころの光強度と真昼間の光強度を比較してみると分かります)ので、そのような条件下では光合成の“光障害”は問題にならないと思います。

他方、植物における花芽の分化などは非常に少ない光量を感じて起こりますので(光周性などの場合)、夜間照明がそのような生理現象に影響を与える可能性はあります。例えば、街灯や広告灯の側で育ったイネやアサガオなどが開花しなかったり、開花が遅れることが知られております。これらの植物は短日植物と呼ばれるもので、それぞれの植物に固有の一定の長さの暗期を含む日周期が与えられることが花芽の形成に必要なことを特徴としております。実際、この特徴に基づき、人工照明での照射により明暗周期を変えることで開花の時期をずらすことは、キクやカーネーションなどで実用化されています。ただし、光の必要性の有無をも含めて、光の感受性は植物の種類や品種によって大きく異なっておりますので、一概に言うことはできません。また、(点)光源から放射される光の強度は距離の二乗に反比例して減衰しますので、夜間照明の影響の及ぶ範囲は限定的なものになると思います。花芽の形成に及ぼす光の効果は歴然としておりますので、時間をかけて観察して見られると如何でしょう
か。

私の知る範囲では、光環境についての環境基準のようなものは国のレベルでは決められていないようですが、地方自治体によっては街灯の照度基準(環境基準)が定められている場合があるのではないでしょうか。
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2007-04-10
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