一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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タンポポの在来種と外来種の交雑

質問者:   高校生   環境科学部
登録番号1224   登録日:2007-04-02
タンポポの在来種と外来種の交雑問題を調べたいです。
文献には、外観の特徴が在来種であっても花粉の大きさにバラつきが見られたらそれは交雑種であるとありましたが、がくの反り返りの出現は成長段階でも異なると思いますし、花粉の大きさのバラつきの有無も単に虫によって運ばれただけなのかもしれません。もっと客観的な判別法はないでしょうか。
環境科学部のみなさん

下記質問について、関連の研究をされている愛知教育大学生物学教室の渡邊幹男先生に回答をしていただきました。

[回答]
日本列島に生育するタンポポ属植物は,有性生殖を行う2倍体種(ニホンタンポポ-在来種)と無融合生殖を行う倍数体種があります。倍数体種の中には,セイヨウタ ンポポTaraxacum officinale Weber,アカミタンポポT. 1aevigatum DC.の,2種のヨーロッパ原産のタンポポ属植物が帰化種として生育しています。特にセイヨウタンポポの大部分が交雑によって有性生殖を行う在来種の遺伝的特性を取り込んでいることが1995年に私の研究室で行った調査で明らかになりました。このように,交雑によって他種の遺伝子を取り込む傾向を持つ無融合生殖種は強奪種と呼ばれ,他の有性生殖種の遺伝子を取り込むことによって相手の種の分布域を侵略し,分布を拡大していくことができるものと思われます。なかでも雑種性セイヨウタンポポは,スーパー帰化種として在来種の生育地にまで分布を拡大していることもわかっています。
その雑種の識別は外部形態からでは判断しにくいですが,分子生物学的方法の1つであるアロザイム分析を行えば識別は可能です。その識別方法は,GOT染色で得られたゲル板上で、dバンドのみが現れたものを真の帰化タンポポ、dバンドとニホンタンポポを特徴づけるa,b,cバンドのうち一つを合わせ持つものを雑種性帰化タンポポです。外部形態による識別では,100%識別することは不可能です。したがった,分子レベルの解析によってしか雑種の識別はできません。
7から8割程度の確立で識別できる形態としては,外総苞片辺縁の毛数,突起長,痩果長です。それから花粉についていえば,花粉がほとんどできない帰化タンポポは雑種です。花粉ができる雑種もあります。それから,雑種はすべて見かけ上帰化タンポポの個体のみです。ニホンタンポポの形態をした雑種はありません。

渡邊 幹男(愛知教育大学生物学教室)
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2007-04-26