一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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フラボノイド類の加水分解について

質問者:   会社員   あっき〜
登録番号1233   登録日:2007-04-18
植物の生理学など全く素人の者ですが、植物抽出エキスについて
素朴な疑問を持ちましたので、質問をさせていただきました。
植物抽出エキスは健康や美容に効果があるとされて色々な製品に
応用されていると思います。このような抽出液にふくまれる
フラボン類やタンニン、酵素やたんぱくといった成分は
保存期間や保存温度によって、活性を失うことはないのでしょうか?
初歩的な質問で大変申し訳ありませんが、教えていただけましたら
幸いです。
あっき〜 さん:

日本植物生理学会 みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。ご質問は標記の番号で受け付け、回答をお送りします。

単刀直入に、ご質問にお答えします。
フラボン類やタンニン類は植物固有の成分で非常に多くの植物に含まれています。抽出して、精製したフラボン類はかなり安定な化合物です。乾燥した状態であれば、温度を特に気にしなくても長い期間保存できますし、化合物としての性質も変化しません。タンニン類にもいろいろな種類があり、一般に化合物としては安定ですが、非常に酸化されやすい性質を持っていますので、空気中にある時間放置保存すると酸化して褐色になります。酸化物は元の性質とは違います。ところが、酵素、タンパク質は高分子物質で、フラボン、タンニンなどの低分子物質と全く異なります。酵素はタンパク質ですが、固有の構造をして、固有の触媒活性(生化学反応を進める働き)をもつものです。酵素を含めタンパク質は「変性」といって固有の構造が変化する性質を持っています。特に、高温、pH変化などに敏感で、容易に変性して活性を失います(生卵を加熱したり、牛乳に酢を加えたりするとタンパク質が不溶性になりますね。変性したからです)。ただ、消化酵素類は比較的安定で、安定剤などを加え胃腸薬などに使用されていますが、乾燥状態を保つことが必要です。家庭用洗剤などに「酵素入り」を売りにしている製品を見かけます。これらの酵素は、極端な高温、pH条件など極限状態に生育する微生物起源のもので、とても安定な性質を持っているものです。植物エキス製品は純粋なものでありませんので、保存期間が長くなれば効果が失われ、保存温度が高くなれば効果を失うのが速まると考えれば良いと思います。
最近は、いろいろな植物成分が健康や美容に効果があるということを、雑誌、テレビ番組などで盛んに宣伝していますね。少し前までは、専門家の間でのみ知られていたような植物成分名や酵素、タンパク質名などが専門用語でそのまま使われ、いかにも絶大な効果があるような印象を与える広告や記事が目立ちます。「言われるような効果」がどれほどあるのか知りませんが、朝、昼、晩にバランスのとれた食事と十分な睡眠をきちんととり、朗らかな生活をおくることが、健康と美容にたいへん効果的なことは間違いないことと思います。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2007-04-26
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