一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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樹木において幹と根の境界線はどこ?

質問者:   自営業   星の王子様
登録番号1238   登録日:2007-04-20
 お客様の家に仕事に行って木を植えている時、深植えにすると根が呼吸できないから根鉢と地面がほぼ同じ高さになるように植えるように指示した所、作業員からさりげなく「幹と根の境界はどこ・・・}と聞かれ答えられませんでした。外見的には根張りがある辺りが境界らしいと分かりますが、植物の生理的境界はどうなっているのか疑問を感じました。根からの吸水は根圧により、また、インターネットなど調べると幹内の水の上昇は、葉の蒸散による道菅内の陰圧によって引きあげられる・・・と出ていましたが、根と幹の境界付近での養・水分のやり取りはどのようにして行われるの知りたく質問します。宜しくお願いします。「幹と根の境界は何処?」と聞かれたら、どう答えたらいいのでしょうか?
星の王子様 さん:

日本植物生理学会 みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。ご質問は標記の番号で受け付け、回答をお送りします。

樹木や成熟した草本で茎と根の境界をはっきりと見定めることは困難なことです。まず、登録番号0734をお読み下さい。根の特徴は、葉がないこと(葉が発生しない)と維管束の篩管、道管が離れて中心柱と言う囲いの中に配置していること、と言えます。ここでは、理解しやすいので双子葉植物の茎と根の境界について説明します。茎の維管束内の篩管、道管と根の篩管、道管は連続していますから、どこかで維管束系の配置換えがおきているはずです。それが、胚軸という部分です。ですから、胚軸から上が真の茎、胚軸の下につながる部分が根で、胚軸は茎の性質と根の性質とを併せ持っています。胚軸は、種子の中に胚ができるときに作られた器官の一部で、子葉をもつシュートと幼根の間にあります。胚では、未成熟な維管束系が胚軸を貫いて茎と根をつなげています。このとき、すでに維管束並び替えの分岐が起き始めています。発芽すると、ダイズ、トマトなどのように胚軸がある程度成長するもの、エンドウ、アズキのように胚軸がほとんど伸びないものがありますが、シュート、根の成長に伴って胚軸部分は相対的にごくわずかの部分となってしまいますので、外観から見付けることが困難になります。
根の通導組織と茎の通導組織は連続していますので茎、根の境界領域の水、栄養のやりとりは茎と同じです。境界領域は、たくさんの鉄道路線が交差する複雑な切り替えポイント部分をイメージすれば良いかなと思います。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2013-07-17
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