質問者:
教員
やすたか
登録番号1242
登録日:2007-04-24
発芽は「種子から芽や根が出ること」と教科書の説明にあります。授業で子どもが「じゃぁ,球根から芽が出るのは発芽?」「ジャガイモのように地下茎から出るのは発芽?」ということで,私もちょっと調べてみましたが,。「胚が成長を始めるところを発芽」とするならいずれも発芽というように思えます。ところが,たいていの本には「種子から」となっているのですがどうしてでしょうか。
発芽の定義
やすたか さん:
日本植物生理学会 みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。ご質問は標記の番号で受け付け、回答をお送りします。
子ども達は実に鋭い質問をしますね。こういう質問にもきちんとお答えいただくことが理科への関心を強める上に大切だと思います。このコーナーの守備範囲は植物の形、営みなどを含む広い意味での「植物の生きざま」に関するご質問にお答えすることと理解していますので、まず「発芽」の定義をはっきりさせておきます。念のために、「生物学辞典」第3版(岩波書店)を調べましたら、発芽とは「休眠状態にあった芽(成長点)が発育をはじめること」と明快に説明しています。種子ばかりでなく、胞子、花粉、球根、球茎、塊茎や塊根の芽、越冬芽、腋芽などが発育しはじめることはすべて発芽と言います。通常、「種子の発芽」、「花粉の発芽」とか「腋芽の発芽」などのように、発芽する対象器官を指定しますが、対象とする器官がはっきりしているときには、単に「発芽」とのみ言っても意味は理解できます。
この定義で、一つ気になることがあります。それは「休眠状態にある」としている点です。例えば種子の場合、ふつうは胚形成が一定の段階で停止して乾燥しますので、胚は休眠状態に入ります。しかし、胚形成に続いて、休眠することなく、そのまま発芽過程へ進んでしまう「穂発芽」をする系統がコムギやトウモロコシなどにあります。この場合も「発芽」という語を用いますので、「休眠状態にある」と言うことは必ずしも絶対要件ではありません。花粉、胞子などは種子と違って、一個の細胞で、その中には「芽」はありません。しかし、細胞自体に局所的分化がおきて膨らみ出したり、分裂をはじめたりして、一つの方向に発育をはじめますので、「芽に相当するもの」があると考えることができます。これらを、考えると「新しくできた芽(成長点)が発育をはじめること」とすれば、疑問は起こらないと思います。
ここで、妙な例を思いつきました。植物細胞を培養すると細胞は分裂を繰り返して「カルス」という細胞塊となります。この細胞塊を、適当な培地上に移すと、カルスの所々から植物体が再生してきます。カルスという未分化細胞の一部が胚のような発生をはじめ、発育をはじめるのですが、このときは「発芽」とは言いませんね。「カルスの発芽」というのを聞いたことがありません。この段落は付け足しです。重要でありません。
「たいていの本には"種子から"となっている」のはどうしてか。これもご質問のようですが、これだけは、その本を書いた人に聞いてみなければ分かりません。このコーナーの守備範囲外のようです。
日本植物生理学会 みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。ご質問は標記の番号で受け付け、回答をお送りします。
子ども達は実に鋭い質問をしますね。こういう質問にもきちんとお答えいただくことが理科への関心を強める上に大切だと思います。このコーナーの守備範囲は植物の形、営みなどを含む広い意味での「植物の生きざま」に関するご質問にお答えすることと理解していますので、まず「発芽」の定義をはっきりさせておきます。念のために、「生物学辞典」第3版(岩波書店)を調べましたら、発芽とは「休眠状態にあった芽(成長点)が発育をはじめること」と明快に説明しています。種子ばかりでなく、胞子、花粉、球根、球茎、塊茎や塊根の芽、越冬芽、腋芽などが発育しはじめることはすべて発芽と言います。通常、「種子の発芽」、「花粉の発芽」とか「腋芽の発芽」などのように、発芽する対象器官を指定しますが、対象とする器官がはっきりしているときには、単に「発芽」とのみ言っても意味は理解できます。
この定義で、一つ気になることがあります。それは「休眠状態にある」としている点です。例えば種子の場合、ふつうは胚形成が一定の段階で停止して乾燥しますので、胚は休眠状態に入ります。しかし、胚形成に続いて、休眠することなく、そのまま発芽過程へ進んでしまう「穂発芽」をする系統がコムギやトウモロコシなどにあります。この場合も「発芽」という語を用いますので、「休眠状態にある」と言うことは必ずしも絶対要件ではありません。花粉、胞子などは種子と違って、一個の細胞で、その中には「芽」はありません。しかし、細胞自体に局所的分化がおきて膨らみ出したり、分裂をはじめたりして、一つの方向に発育をはじめますので、「芽に相当するもの」があると考えることができます。これらを、考えると「新しくできた芽(成長点)が発育をはじめること」とすれば、疑問は起こらないと思います。
ここで、妙な例を思いつきました。植物細胞を培養すると細胞は分裂を繰り返して「カルス」という細胞塊となります。この細胞塊を、適当な培地上に移すと、カルスの所々から植物体が再生してきます。カルスという未分化細胞の一部が胚のような発生をはじめ、発育をはじめるのですが、このときは「発芽」とは言いませんね。「カルスの発芽」というのを聞いたことがありません。この段落は付け足しです。重要でありません。
「たいていの本には"種子から"となっている」のはどうしてか。これもご質問のようですが、これだけは、その本を書いた人に聞いてみなければ分かりません。このコーナーの守備範囲外のようです。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2013-11-24
今関 英雅
回答日:2013-11-24