一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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道菅と仮道管について

質問者:   自営業   星の王子様
登録番号1245   登録日:2007-04-26
植物が根から養・水分を吸収し、それらを形成層の内側に存在する道菅(広葉樹)や仮道管(針葉樹)を通って枝や幹に運搬される・・・と言うのは、今までの貴学会の多くのお答えの中に出てきていますので理解は出来るのですが、新たな疑問です。道菅と仮道管の構造上の違いはどんなことでしょうか?太さや長さ、或いは養・水分が移動する速さなどはどうなんでしょうか?又、ヤシ、竹、シュロなどの通道組織はどちらに分類されているのでしょうか?度々の質問で恐縮です。宜しくお願いします。
星の王子様 さん:

道管と仮道管に関する二つのご質問は同じ内容「道管と仮道管の構造上の違いは何か」ですので、一つのご質問(登録番号1245)としてお答えすることにします。
仮道管は長い、両端が尖った紡錘形をし、二次細胞壁が厚くてリグニン化した死んだ細胞で中身はありません。特徴は、紡錘形をした細胞の側壁に壁孔と呼ばれる、その部分だけ二次細胞壁が形成されない孔があることです。壁孔の並び方で仮道管の紋様は多様ですが、種による特徴があります。幾つかの仮道管が、上下ずれて側壁同士で接触していますが、多くは壁孔でお互いにつながっています。仮道管は上下につなぐ壁孔はありません。水は、壁孔をとおって隣の仮道管に移り、さらに別の仮道管へ、壁孔を通って移動する、いわばジグザグ状に移動します。裸子植物やシダ植物では仮道管が主となる水や栄養塩の通道組織となっています。特に、針葉樹では道管はなく仮道管だけが水の通路となっています。
一方、道管は、主に被子植物にありますが、生きている元になる細胞が伸長し、厚い二次細胞壁を形成すると、上下にある細胞のつなぎ目部分の細胞壁に大きな孔があいてつながり、長い管状になったもので、死んだ細胞のつながりです。リグニン化した二次細胞壁の内側は、環状あるいは螺旋状、網状に肥厚していて、特徴ある模様を示しています。このように、仮道管と道管は構造的に大変違いますが、進化的には、仮道管から道管へ進んできたと考えられています。被子植物は主に道管をもっていますが、種や部分によって仮道管もあります。登録番号1113をご参照下さい。
ご質問にある、ヤシ、竹、シュロはいずれも、被子植物で、主として道管が水の通導組織になっています。
仮道管も道管も、太さや長さは、種や器官、部分によって大きく違いますので、一概に平均値などをあげることはできません。また、仮道管液、導管液の移動の速さは、葉における蒸散量に依存しますので、植物種、温度、日照条件、大気湿度や、草本か木本か、若いか成熟したかによって、大きく異なります。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2007-05-07