一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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形成層の存在

質問者:   大学生   Dice-K
登録番号1264   登録日:2007-05-13
生物学のレポートを書くにあたって様々な文献をあたっていましたが、「なぜ双子葉類には形成層が存在するのに単子葉類には存在しないのか」という疑問に対する答えが見つかりませんでした。
単子葉類の茎は双子葉類ほど肥大しないからといってしまえばそれで終わりですが、もっと明確な回答が欲しいです。
Dice-K さん:

日本植物生理学会 みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。「形成層の存在」と題するご質問にお答えします。
自然科学において「なぜ?」という疑問をもつことは大切なことですが、一般に「なぜ?」には「どんな理由で」と「どんな仕組みで」という二つの意味合いがあり、科学では「どんな仕組みで」にはお答えすることができます。しかし、「どんな理由で」にはほとんどお答えできないのです。ところが、「なぜ双子葉類には形成層が存在するのに単子葉類には存在しないのか」とのご質問には、どちらの「なぜ?」にもお答えすることができないことなのです。長い進化の過程でコケ類、シダ類、裸子植物、被子植物、その中に単子葉植物、双子葉植物と多様性が生まれてきたのです。このような進化は、遺伝子の進化(遺伝子組成の複雑化への変化)に裏打ちされたものです。そのため、植物の形作りや働きの作業工程も変化してきたのです。
大ざっぱな表現を取るならば、単子葉植物ができてくる過程では維管束形成層や維管束間形成層が発達しないような作業工程を選び、多くの場合、茎の二次成長がおきない道を辿ってきたと言えます。一方、双子葉植物は維管束形成層ができる作業工程を発達させ、さらに木本で維管束間形成層が発達するようになると二次成長が可能になる作業工程ができあがってきたものと言わざるを得ないのです。ここで、「どんな理由で」このような違った進化の道を辿ったのかという疑問は、「どんな理由で」種や生態的な多様性が生まれたのかとの疑問と同じように、今は、分からないことで、「明快な回答はない」ことになります。
ただ、「単子葉植物には形成層がない」とは一概に言えない面があります。木性の単子葉であるユッカの仲間では茎の表面近くに柔細胞からなる環状の「形成層」があり内側に向かって維管束や柔組織を形成します。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2007-05-18
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