一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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植物とスポーツドリンク

質問者:   大学生   MAY
登録番号1266   登録日:2007-05-14
水とスポーツドリンクの違い、人と植物の違いを調べています。
植物にスポーツドリンクを与えるとどうなるのでしょうか?
MAYさん:

日本植物生理学会 みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。「植物とスポーツドリンク」に関するご質問は標記の番号で受け付け、回答をお送りします。
ご自分で試してみたら如何でしょうか? 鉢植えの植物は簡単に入手できますから、土壌を洗い落として水耕栽培に移します。発泡スチロールをうまく利用すれば、容易に水耕栽培することができます。そこで、植物肥料(市販の液肥)とスポーツドリンクを培養液として与えたらどうなるのか、簡単に「実験」することができますね。植物学者でこのような実験をした例を聞いたことがありませんので、見える結果が何日くらいで出るのか分かりませんが、やがて、はっきりした結果が生育の違い、色の違いとして出てくるはずです。スポーツドリンクは、人が激しい筋肉運動をしたときに失われる水、塩類を補給するために開発されたもので、生理的食塩水に近いものです。飲みやすくし、栄養効果を高めるために糖類、ビタミン類なども補強されているのがふつうですね。商品となっているスポーツドリンクの組成は分かりませんが、汗と一緒に大量に失われる塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウムなどが主要な塩と思われます。このようなスポーツドリンクを植物に与えても、浸透圧は根の吸水を抑制するほどではありませんので、直ぐに悪影響が出るとは思えません。しかし、食塩の濃度にもよりますが、生理食塩水と同じ程度の食塩(約0.9%、約155mM)があるとすると、多くの植物では塩害が数日のうちに現れるはずです。3倍かそれ以上に薄めればそのような害はなく、塩類、糖類なども利用されますので、直ぐに異常な効果は出てこないとおもいます(ただし、糖類がありますので細菌やカビが繁殖する恐れがあります)。植物生育に必要な塩類はマグネシウム、カリウム以外に窒素、リン酸の他各種の金属も必要ですので、希釈したスポーツドリンクだけでは生育を持続することはできず、やがては枯死することになります。鉢植えの植物では、土壌中にすでに含まれる栄養塩類の効果が続きますのではっきりした効果が現れない恐れがあります。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2007-05-18