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硝酸態窒素のえぐみって?

質問者:   会社員   アキ
登録番号1269   登録日:2007-05-16
植物学とはいささか分野が異なる質問かもしれませんが、一般的に硝酸態窒素とは「アク」であり、えぐみの元になると聞いておりますが、えぐみとして感じる成分、あるいは機構はどのようなものなのでしょうか?他の質問でシュウ酸の不快な味はシュウ酸の結晶が舌にささる、と書いてありました。硝酸態窒素の場合はどうなのでしょうか?
アキ さま

最近、ひどいえぐみをもつ食物に出会うことは少なくなりましたが、今回のえぐみのご質問を受けて、私が子供の頃、戦争中の食物にはえぐみのひどいものが多かったことを思い出しました。その中でもサトイモのえぐみは、現在の市販のサトイモに比べ格段に強烈であったように思います。食糧が不足していた当時、顔をしかめつつ食べなければなりませんでしたが、現在ではえぐみの低い品種になっているようです。ご存知のようにオセアニア、アジアの熱帯地方にはサトイモ(タロイモ)を主食としている地域が多く、古代から長年にわたって、えぐみの少ない品種が食物として選抜されてきたはずです。サトイモの仲間にはもっとえぐみがひどくて食べられないクワズイモがある位ですから。ヒトにとってえぐみとなる成分が、サトイモなどの生育にとってどのような生理的な意味があるのか、えぐみを減らすためにはどうすればよいか、などは熱帯アジア、ポリネシア地域の食糧問題にとっても非常に重要なことですが、余りよく研究されていません。
ところで、ご質問のえぐみについて、これまでこの質問コーナーで、登録番号0236、登録番号0986、登録番号1119、登録番号1205それぞれに対する回答をごらんいただければお分かりのように、シュウ酸がえぐみ成分の一つであることは確かと思われます。植物に含まれているシュウ酸カルシウムの結晶がえぐみを与える他に、水に溶けやすいシュウ酸(またはそのカリウム塩)と唾液の中のカルシウム・イオンが舌の上でシュウ酸カルシウムの結晶を形成し、それがえぐみを与えることもあるようです。この他にチロシン、フェニールアラニンの分解中間体であるホモゲンチジン酸もえぐみ成分の一つと考えられています。
ご質問の硝酸態窒素とえぐみとの関係については、登録番号0236、登録番号1205の回答にも述べられています。硝酸塩肥料で栽培するとアンモニウム塩肥料に比べ、植物の硝酸態窒素含量が一般的に高くなります。植物に吸収された硝酸塩は必要とされるアミノ酸、蛋白質量に応じて、ゆっくりと亜硝酸塩に還元され、亜硝酸塩はアンモウム塩に速やかに還元され直ちにアミノ酸、蛋白質の合成に利用されます。基本的に亜硝酸塩、アンモニウム塩は植物の細胞にとって好ましい中間体ではないため、これらの細胞内濃度が高くならないよう、亜硝酸塩以降の段階が速やかに進行するようになっています。従って、とくに硝酸塩肥料を与えすぎた場合、細胞内の硝酸塩含量が高くなります。このような時、同時にシュウ酸含量も高くなることが多くなるようですが、硝酸塩自身は水によく溶けるため、シュウ酸カルシウムのように結晶となってえぐみを与えることは考えられません。えぐみが植物に含まれているレベルの硝酸塩そのものによってひどくなるか、無関係かは、調理科学の問題で私たちの守備範囲外のことになります。ウシでは硝酸塩含量の高い植物(牧草)を多量に摂取し、胃の微生物によって硝酸塩が亜硝酸塩に還元されると、亜硝酸塩そのものの毒作用(へモグロビンとの結合)、さらに亜硝酸とアミノ酸、アミンとの反応で生ずるニトロソアミンの毒作用(発ガン性)を受けます。しかし、ヒトの胃では幼児を除き成人では微生物による硝酸塩の亜硝酸塩への還元は生じないとされています。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2012-08-25
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