一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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いちごの鮮度保持について

質問者:   自営業   嶋田 誠一
登録番号1287   登録日:2007-05-30
いちごは収穫直後から果皮の軟化や果色の黒ずみ(着色の進行)が始まります。これらの現象はいちご果実の老化が早まったことによるのでしょうが、いちごとエチレンガスとの関係を文献で見たことはありません。いちごの老化とエチレンガスの関係はあるのでしょうか?
もし関係があるとすれば、収穫したいちごを冷蔵する保冷庫内でエチレンガスを取り除けばいちごの鮮度保持がうまくいけると思うのですが。
嶋田 誠一 さん:

日本植物生理学会 みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。イチゴは、環境条件を整えれば長期間の栽培、出荷ができる作物の一つですね。他の果実と違って、収穫後は糖分が増加することもなく、老化が進行して、非常に痛みやすく(病気にもなりやすく)保蔵(貯蔵)に適した果実ではありません。そのため、イチゴの収穫期は、果実がもっとも熟したとき(少なくとも3/4以上が着色)で、直後に出荷する(食べる)こととされています。一般に、エチレンは果実の成熟に密接な関係がありますが、イチゴはエチレン生成が非常に少なく、またエチレンに反応もしない珍しい例外的な果実です。収穫後の過熟にエチレンが関与しているとは考えられていませんので、エチレンを除いたりしても効果は期待できません。イチゴの主な病害菌は灰色カビで、感染していると収穫後にカビの成長が早まって痛みが進みます。生食用には、病菌の感染がない場合、温度0度C、相対湿度90-95%の冷蔵で2日から最長7日くらいまで貯蔵できるとの報告はあります。貯蔵庫内の空気を調整するCA貯蔵で、二酸化炭素濃度を10-15%、温度2度C程度にすると貯蔵期間を多少長くすることができるようですが、その効果はカビの成長を抑制するためとされています。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2007-05-31