一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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植物の質量について

質問者:   その他   谷川
登録番号0129   登録日:2004-09-21
これまで何度も、疑問に思いながらも、常識はずれな質問のようにも思え、誰にも聞けずにいた疑問です。極めて単純な疑問なのです。

植物は元々小さな種から大きく成長していく訳ですが、その間、外界から得られる物質としては、限られているように思えるのですが、本当に、それだけで、あれほど大きく成長してゆく姿を見ていると、これだけの質量が本当に供給されたのかと思ってしまいます。
例えば、ひまわりの種の重さと、成長して花が咲いた頃のひまわりでは、何倍もの質量変化を伴っているように思え、果たして、その分の土の質量変化があるのか、供給された水や酸素との収支はどうなっているのかなど、不思議に思えてしまいます。
質量保存の法則は頭では理解しているつもりですが、植物の成長に関して厳密に証明されているものなのでしょうか。
(当たり前すぎて、誰も調べようとは思わないとは思いますが。)
まだ科学的には証明されていませんが、常温での原子核変換が様々な実験で検証中です。
まさか、植物の中でそんなことが、ごく普通に行なわれてやしないかと、思ったりもしてしまいます。

谷川さま

 確かに、種から成長個体になると重量が著しく増加します。
 増加した重量の内訳と しては、水、有機物(タンパク質、糖、脂質)、無機物があり、その増加重量分だけ、本当に 環境(土壌、大気)から物質が減少しているのであろうか、というご質問だと思いますが、必ず減少しているはずです。

 植物は種から成長して重量が増加していく過程で、必要な水や無機物を根で吸収し、葉では二酸化炭素を吸収して有機物を合成し、一方で酸素や余分な水を放出します。種から成長して大きくなった個体は環境(土壌、大気)から化学物質を取り入れた分 だけ重量を増し、その分、環境から化学物質は減少しています。
 すでに、16世紀にベルギーの医師 JB Helmontは、ヤナギを土に植えて、水だけで5年間成長させ、そのときに土壌の乾燥重量が160g減少していることを明らかにしました。さらに、18世紀スイスの生物学者 NT de Saussureは、植物が吸収する二酸化炭素と放出する酸素の量が等しいことを明らかにしています。その後この吸収された二酸化炭素がデンプンに変わることが、19世紀の著名な植物学者Sachsによって明らかにされています。
 実際には、多くの(草本)植物体の80-90%は水で出来ていますから(ヒトの場合は70%ぐらい)、増加重量の大半は水によると言えます。トウモロコシでは、1gの有機物を合成するのに、500g〜1kgの水が使用されるという実験結果があります。ただし、大半の水は根から吸収されたあと、蒸散により気孔から空気中に放出されてしまいますから、水の多くは環境から吸収されて、環境に戻されていることになります。

 いずれにせよ、植物は生育のために、化学物質を利用しているのであって化学物質中の「元素」を変化させたり、作り出したすることはありえないからです。
 従って全体として「収支」はあっています。

 岡崎 芳次(大阪医科大学)
神戸大学
 三村 徹郎
回答日:2008-07-10
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