質問者:
教員
うっちー
登録番号1300
登録日:2007-06-10
授業で双子葉類と単子葉類の維管束の並び方を学習した際、「なぜ双子葉類と単子葉類の茎の維管束の並び方は同じなのに、根の維管束の並びは両方とも同じなのか」と生徒に尋ねられました。みんなのひろば
根と茎の維管束の並び方
根という器官の機能は、双子葉類も単子葉類も同じであるから、維管束の並び方が同じでも不思議は無いと考えましたが、そもそも双子葉類と単子葉類の茎の維管束の並び方が異なっている理由が気になっています。
生徒の質問は最もだと思っています。教職に就きながら無知であることを恥じておりますが、生徒の質問をそのままお尋ねいたします。よろしくお願いします。
うっちー様
みんなの広場へのご質問ありがとうございました。頂いたご質問は大変難しいもので、なかかな回答が頂けず、大変お待たせすることになってしまいました。ゴメンナサイ。ようやく東京大学付属植物園の邑田 仁先生より以下のようなご回答を頂くことができましたので、お届けします。回答からも読み取れると思いますが、なかなか難しい質問だったようです。
邑田先生のご回答
質問者の先生は「なぜ」という適応的な理由をたずねようとしているようです。しかし、ある形質の進化はそれが突然変異として出現したときたまたま自然選択により除去されてしまわなかったことにより新しい形質として定着した結果(極論すれば偶然の産物)であるので、よほどはっきりしている場合でない限り適応的な理由を述べるのは難しいし、憶測にすぎないと考えられます。
さて、生徒さんの質問の意図のほうは「莖では変わっている(変わった)のになぜ根では変わらないか?」ということだと考えられます。これは「維管束形成に関わるシステムは莖でも葉でも統一的ではないか?一部だけが変わったのはなぜ?」という質問に近いものと受け取れます。
最近の分子系統学的研究の成果から、被子植物は双子葉植物が先に出現し、そのなかから単子葉植物の共通祖先が出現(進化)したことが明らかになっています。その際、莖の維管束が現在のような散在維管束へと進化したと考えられます。双子葉植物の段階ですでに莖と根の維管束の配列が異なってきていますから、莖の維管束と根の維管束の形成をコントロールするシステムは単子葉植物が出現する前から(一部にせよ)別々であったと考えられます。そのうち、莖の維管束形成をコントロールするシステムだけに突然変異が起きれば、根の維管束は変化せず、莖の維管束の形状が変化することが可能です。(私は維管束について専門ではありませんので知りませんが、根の維管束についても、詳しく見れば単子葉植物で別の突然変異が起きていることが十分考えられると思います。)
邑田 仁(東京大学付属植物園)
みんなの広場へのご質問ありがとうございました。頂いたご質問は大変難しいもので、なかかな回答が頂けず、大変お待たせすることになってしまいました。ゴメンナサイ。ようやく東京大学付属植物園の邑田 仁先生より以下のようなご回答を頂くことができましたので、お届けします。回答からも読み取れると思いますが、なかなか難しい質問だったようです。
邑田先生のご回答
質問者の先生は「なぜ」という適応的な理由をたずねようとしているようです。しかし、ある形質の進化はそれが突然変異として出現したときたまたま自然選択により除去されてしまわなかったことにより新しい形質として定着した結果(極論すれば偶然の産物)であるので、よほどはっきりしている場合でない限り適応的な理由を述べるのは難しいし、憶測にすぎないと考えられます。
さて、生徒さんの質問の意図のほうは「莖では変わっている(変わった)のになぜ根では変わらないか?」ということだと考えられます。これは「維管束形成に関わるシステムは莖でも葉でも統一的ではないか?一部だけが変わったのはなぜ?」という質問に近いものと受け取れます。
最近の分子系統学的研究の成果から、被子植物は双子葉植物が先に出現し、そのなかから単子葉植物の共通祖先が出現(進化)したことが明らかになっています。その際、莖の維管束が現在のような散在維管束へと進化したと考えられます。双子葉植物の段階ですでに莖と根の維管束の配列が異なってきていますから、莖の維管束と根の維管束の形成をコントロールするシステムは単子葉植物が出現する前から(一部にせよ)別々であったと考えられます。そのうち、莖の維管束形成をコントロールするシステムだけに突然変異が起きれば、根の維管束は変化せず、莖の維管束の形状が変化することが可能です。(私は維管束について専門ではありませんので知りませんが、根の維管束についても、詳しく見れば単子葉植物で別の突然変異が起きていることが十分考えられると思います。)
邑田 仁(東京大学付属植物園)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2007-07-12
柴岡 弘郎
回答日:2007-07-12