一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

チェックリストに保存

アントシアニンを葉に塗った場合は?

質問者:   会社員   せんたろう
登録番号1305   登録日:2007-06-14
 植物体内でアントシアニンが作られることは、色々な媒体で目にして分かったのですが、たとえば、アントシアニンを緑色の葉に塗った場合、葉の表面から吸収されて師管を通って葉以外の茎や根に運ばれることがあるのでしょうか?あるいは、本来紅葉しない種類の植物が、紅葉するようなことがおこるのでしょうか?

 NHK教育テレビや本でアントシアニンの働きによって紅葉することが分かったのですが、では葉に塗ったらどうなるのだろうか、という素朴な疑問がわいたのですが、解決できる資料にあたることが出来なかったので、ばかげた質問かも知れませんがお答えいただけないでしょうか。宜しくお願い申し上げます。

 
せんたろう さん:

日本植物生理学会 みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。「アントシアニンを葉に塗った場合は?」のご質問は標記の番号で受け付けました。私が担当することになりましたが、ご質問を読んでその主旨がよく理解できないためしばらく考え込みました。お知りになりたいことの答えになるかどうか分かりませんが、植物細胞の物質吸収の面から考えてみました。
根でも葉でも植物細胞は、いろいろな種類の生体成分を細胞の外側に分泌したり、また吸収したりしています。ショ糖、アミノ酸、フェノール物質、有機酸類、ある種のタンパク質や脂質類あるいは水素イオンやその他の無機塩類などがあります。細胞の種類によって、このような物質は異なりますし、物質によっては排出だけされ、吸収されないものもたくさんあります。これらの排出、吸収は細胞の必要な営みで、細胞膜からの排出、吸収にはそれなりの特別な装置(チャンネルやポンプ、トランスポーターなど)が備わっています。また、細胞膜は特定の性質を持った外来物質を透過させる場合があります。たとえば、除草剤などはふつう植物体全体に散布します。これらの多くは植物体に吸収され、細胞内の代謝に異常を起こさせるものです。その後は農薬自体も代謝(分解や無毒化)されます。実際は、これら農薬類は吸収されることで効果が出るため、開発段階で吸収される物質が選択されてきたものです。さて、アントシアニンを散布したらどうなるか、がご質問の主旨と理解します。植物は、アントシアニンを蓄積する細胞あるいはその隣接細胞で合成して、細胞の液胞内にため込み、長距離輸送をしません。また、その組織局在にも特徴があり、ふつう花弁や葉の一番外側かその内側の1〜2細胞層にだけ蓄積され、細胞外に排出されることはありません。とすると、外からアントシアニンを塗布しても、おそらく細胞内に取り込まれることはないと思われます。細胞壁の多糖類に吸着されて細胞壁は染色されるかもしれません。ですから、塗布したアントシアニンがたくさん吸収され、他の器官に運ばれて、本来紅葉しない葉を赤く着色することはまずあり得ない話だと思います。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2007-06-19
植物 Q&A 検索
Facebook注目度ランキング
チェックリスト
前に見たQ&A
入会案内