一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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枝先での光合成産物と枝の伸長について

質問者:   自営業   星の王子
登録番号1309   登録日:2007-06-15
庭に植えられているスギの木(6年生・高さ1.5m)を強く剪定したら幹からほうき状に萌芽してきて幹が見えなくなってしまいました。主要な枝で形を整えるために、主要な枝だけに光合成産物を送って、より伸ばそうと思っているのですが、こう言った場合、萌芽枝を整理してしまうと光合成の絶対量が減少してしまい、主要な枝も伸びが停滞するような気がしてなりません。かといって萌芽枝を大量に残しておくと、そちらに光合成産物を廻さなくてはならなくなるし、迷ってしまいます。主要な枝をより勢い良く伸ばしたい場合、この萌芽枝を切った方が良いのか、残しておいたほうが良いのか迷ってしまいます。こう言った場合、植物生理学的にはど考えたら良いのでしょうか?又、切るとしたらいつごろが適当なのでしょうか?
星の王子 さん:

日本植物生理学会 みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。スギは萌芽力の強い植物で、いわゆる強剪定をしても大丈夫な樹種の一つです。スギ、ヒノキなどは材を利用しますので、良質の無節材や主幹の太さを一定にするような剪定(枝打ち)をこまめにする、手数のかかるものです。しかし、庭園樹木の剪定は観賞用に樹形を整えたり、込み合った小枝を除いて風通しをよくしたりするためにするものですので、樹形を崩してしまうような剪定は困った結果になってしまいます。強剪定は、チャのように若芽だけを採取する場合や、樹形を根本的に変える場合にも行います。この後者の場合は、樹形を整えるのに年月を必要とします。樹木の剪定は、植物生理学的には1)頂芽優性を壊して腋芽の発育を促す、2)不定芽の形成を促す、の二つの作用のどちらか(あるいはその両方)を利用するものです。ふつう葉が枝に付いている付け根には腋芽があって、枝の先端を切ると腋芽の成長がはじまって枝になるのですが、スギの葉と枝との間には節がなく腋芽もありません。したがって、剪定した後には茎(枝)に不定芽が形成されて枝(萌芽枝)となります。6年生という、比較的若いスギを強剪定されたとのことですが、主幹の先端も剪定されたのでしょうか。いずれにしろ、先端を切られた幹、枝からは不定芽に基づく小枝が多数発生することになります。萌芽力が強いとはこのような性質を指しています。スギを含む裸子植物では、枝の独立性が比較的強いものです。つまり、枝の生長はその枝についている葉の光合成でほぼ賄われます。そのため、残したい枝の萌芽枝を残して、その他の萌芽枝を除けば、時間はかかりますが期待する樹形に仕立て直すことはできるはずです。大きくなった枝を切るよりも、細かく何度も剪定した方が樹形を整えるにはよいのではないでしょうか。ふつう晩春から初夏と冬に入る前に剪定することが多いですね。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2007-06-19
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