一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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野菜の無肥料栽培について

質問者:   会社員   宮川
登録番号1314   登録日:2007-06-20
趣味で家庭菜園をしていますが、無肥料栽培と言う栽培があることを知りましたが無肥料でも肥料栽培と同じぐらいの収穫が望めるのでしょうか?また、無肥料の方が害虫が付きにくいとのことらしいですが、そうなのでしょうか?以上の事がもしそうなら農家の方も栽培が凄く楽になると思うのですが、回答宜しくお願い申しあげます。
宮川 様

植物が成育するためには、水、空気中の二酸化炭素、太陽光の他に、土壌から吸収される無機養分(少なくとも14種類の元素)が絶対に必要です。植物の生育に必要な土壌の無機養分は無限にあるわけではなく、その量は植物に吸収され減少します。農業では、これを補うのが肥料ですが、無肥料栽培は無機養分の別の供給源がなければ、長く続けることはできません。植物の水耕栽培では、培養液に無機養分がなければ種子に含まれている僅かの無機養分だけで発芽はしても、培養液に無機養分がなければそれ以上成長を続けることはできません。このように、無機養分が植物の生育に必須であることを疑う余地はありません。

最近50年間だけを考えてみても、世界人口は2倍近くに増加していますが、耕地面積はそれ程増えていません。それでも、幸い、世界的に大きな飢餓がないのは、肥料、特に窒素肥料がこの50年間で4倍施用されるようになり、面積当たりの収量が増加しているためです。

植物の成育に必要な無機養分を化学肥料の形で施用するのは、人類の歴史の上ではほんの最近、19世紀末になってからです。それまで人類を支えてきた農業は、ご質問にある無肥料栽培であったわけですが、しかし、肥料の必要性は認識され、主に、人を含め動物の排泄物、動物体(魚肥など)、落葉、わらなど植物体そのものや油粕などが、堆肥、厩肥として施用されてきました。これらの生物体や排泄物は土壌中の微生物によって少しずつ分解され、無機養分の給源になると共に、これらの有機肥料は土壌の物理的条件を保持する役割ももっています。もし家庭菜園の土壌に、これらの有機肥料が充分に施肥されていれば(換言すれば、非常によい土であれば)、ある程度の期間、化学肥料なしでも野菜を大きくできるでしょう。しかし、化学肥料、または、有機肥料、またはその両者の施用なしに野菜を永久に、何回も成長させることは、不可能です。

無肥料栽培にすると害虫がつきにくいかどうかについては一概にお答えできません。これらは多くの条件の組み合わせの一つでそうである場合があったとしても、無肥料栽培であればすべての野菜が虫にとって魅力的でなくなるとは断言できません。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2007-06-25
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