一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ヒメツリガネゴケが遺伝子操作に適している理由

質問者:   大学生   eliss
登録番号1316   登録日:2007-06-22
ヒメツリガネゴケは高い頻度で相同組換えを起こすため遺伝子ターゲティングによる機能解析に適した性質を持っている。ゆえに現在幅広く用いられているモデル植物の一つである…と聞いたのですが、ではコケ植物の中で、ヒメツリガネゴケに限って何故そのような性質を持っているのでしょうか。自分なりに専門書などで調べたのですがはっきりとした答えが得られませんでしたので、専門家の先生にお伺いしたくメールをさせていただきました。どうかよろしくお願いします。
eliss さん:

日本植物生理学会 みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。「ヒメツリガネゴケが遺伝子操作に適している理由」のご質問は標記の番号で受け付けました。
以下の回答は、ヒメツリガネゴケの専門家である基礎生物学研究所の長谷部光泰先生から頂きました。核内にDNA断片が入ってきたとき、どうして染色体DNAに組み込まれるのか実に不思議ですね。多いに興味を持って調べてみて下さい。

ヒメツリガネゴケは酵母と同じくらいの相同組換率を持ち、陸上植物ではこれまで知られている最高の効率です。実際に、酵素処理でプロトプラストを単離し、多少の操作はしますが、基本的にはDNAと混ぜておくだけで遺伝子ターゲティングが容易にできます。1990年代初頭にこの現象が偶然見つかってから、高い相同組換率の理由については相同組換え酵素の特異性などいくつかの仮説が提唱されていますが、未だに理由は不明です。また、他のコケ植物でも相同組換率が高いかどうかは、ほとんど研究例が無く不明です。日本も含めた国際コンソーシアムによって全ゲノム配列がほぼ決定しましたので、今後、他の生物の相同組換に関わる遺伝子との比較解析から、新たな展開が期待されています。

長谷部 光泰(基礎生物学研究所)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2007-06-26
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