一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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C3植物(大豆,菜種およびヒマワリ)の二酸化炭素吸収量

質問者:   大学院生   ひでのり
登録番号1339   登録日:2007-07-12
私はバイオ燃料(特にバイオディーゼル燃料)の研究を行っている者です.
最近,バイオ燃料がカーボンニュートラルという特性を有することから,地球温暖化および化石燃料の代替として注目されています.しかし,ライフサイクルアセスメントの観点から考えると,カーボンニュートラルがほんとうに達成しているのかが疑問に感じています.そのため,私は植物が成長過程(光合成)により吸収するCO2量,および,植物が燃料として使用されるまでの過程に排出されたCO2量の具体的な把握が必要だと考えています.そこで,私はバイオディーゼル燃料の原料である植物(大豆,菜種およびヒマワリ)に関して調べました.その中で,それらの植物がC3植物であることはわかったのですが,どのくらいCO2を吸収するのかがわからなかったので,このメールを送らせていただきました.できれば具体的なことまで教えていただいたら幸いです.よろしくお願いいたします.
ひでのり 様

機械工学専攻の方からご質問をいただき、植物科学に関連する分野の広がりに驚いております。

“カーボンニュートラル”とは、問題の燃料を生産する際に大気から吸収される二酸化炭素(炭素)の量と、その燃料の燃焼に伴って大気中に放出される二酸化炭素(炭素)の量が同じであることを意味しているのですね。この見解に立てば、石油や石炭などの化石燃料の場合には、何億年か前にそれが作られた時のできごとを考慮に入れなければ、燃料の燃焼に伴って大気中に放出される二酸化炭素のことだけを考えることになりますね。これに対し、いわゆるバイオ燃料の場合には、燃料の生産には光合成による植物の生長が必要で、光合成においては大気中の二酸化炭素が消費されるので、原理的には、光合成によって消費される二酸化炭素の量が燃焼によって放出される二酸化炭素の量を相殺し、“カーボンニュートラル”となると考えるわけですね。

ところで、植物の生長量は、どんな植物であっても、基本的には大気中から吸収される二酸化炭素の量によって決まります。したがって、植物体を燃料として利用する場合に先ず問題となるのは、植物体のどれだけの部分が燃料として利用できるかと言う点です(燃料への変換効率)。なお、言うまでもなく、燃料の原料である植物に求められる重要な要件は、生育する環境の下で生長が早い(大量に生産される)ことであります。また、“カーボンニュートラル”とは別の視点になりますが、一定量の植物体から取り出せるエネルギーの量(植物体を構成する有機化合物の種類によって決まる)も重要な問題になりますね。

バイオディーゼル燃料の原料植物として、大豆、菜種およびヒマワリに関心をもたれているようですね。ご質問の具体的な内容は、これらの植物がどれくらいの二酸化炭素を吸収するかと言うものですが、私にはこの質問の意味するところが十分には理解できません。一般に、植物の生長は、生育環境の光の強さや、気温、二酸化炭素の濃度、土壌中の水分や無機化合物の濃度など、多くの要因によって左右されます。もし、この質問の意味が「上に述べた条件が最適のときに、二酸化炭素吸収の最大速度がどの程度であるか」と言うものであれば簡単にお答えできますが、この値は貴方が解析しようとされているカーボンニュートラル特性の達成度には無関係ではないでしょうか。問題の植物がどのくらい二酸化炭素を吸収しているかをお知りになりたいのであれば、植物体の重量(より直接的には、炭素の含量)を量れば良いと言うことになります。

植物の光合成については、最近、本学会が監修した叢書“「植物が地球を変えた!」化学同人(2007年)”があります。これをご参考にして下さると良いのではないかと思います。質疑応答がかみ合っていないかも知れませんので、更なるご質問がございましたら是非お寄せ下さい。
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2007-07-17
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