一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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紫陽花の色について

質問者:   中学生   紫陽花男
登録番号1340   登録日:2007-07-12
僕は、紫陽花の色が七変化だと聞いて、何故七変化するのかなーと思い、花びら(がく)を色々な水溶液に漬けてみました。そうすると、ピンクや、濃いピンク(紫に近い色)が青い花びら(がく)に変わりました。そこで、ミョウバンの成分を見てみると、
硫酸アルミニウムアンモニウムだったので、硫酸の変わりに酢をアンモニウムの変わりに、石鹸水を漬けました。そうしたら、色が変化しなかったので、アルミニウムにより、色が変化している事が分かりました。しかし、分からないことが幾つかあります。
一つ目は、何故、紫陽花の花びら(がく)の色は、土壌の酸性・アルカリ性つまりpHで変わるのに、そのような性質(pH)を持った水溶液につけても変化しないのでしょうか?
二つ目は、紫陽花の付いている木、一本に対して、違う色が幾つか付いているのを見かけます。何故同じ木なのに、色が違う花びら(がく)が付くのでしょうか?
僕の予想では、アルミニウムの行き渡る量がそれぞれの茎(枝)で違うからだと推測しています。  または、1つの塊の花びら(がく)が吸収できるアルミニウムの量が違うからだと、推測しています。   
御願いします。教えて下さい。自分だけでは、全然分からなくて・・・。とにかく、宜しく御願い致します。
紫陽花男様

コーナーへの質問をありがとうございます。
名古屋大学の吉田久美先生にご回答いただきました。また、吉田先生には、2005年に開催された当学会の市民講座でもアジサイの花色を中心に花の色がでる仕組みについて、ご講演いただいています。講演の様子はみんなのひろば「植物科学のトピックス」コーナーの(7)市民講座 植物科学を楽しもう2005( http://www.jspp.org/17hiroba/topics/index.html )にも収録しております。参考にしてください。尚、今年(2007年)9月に植物生理学会市民講座を、京都、名古屋、岡山にて開催します( http://www.jspp.org/17hiroba/topics/simin2007/simin2007_annai.html )。講演内容はアジサイの花ではありませんが、興味があればご参加ください。

ご質問ありがとうございます。
私たちは、アジサイのガク片を薬品で処理した実験を行ったことは無いので、的確にお答えするには

1)これは、ガク片を刻んで水溶液に入れたのでしょうか?
それとも茎(軸)のついたままでしょうか?
2)試薬の濃度はどのくらいでしょうか?処理時間はどのくらいでしょうか?
3)もとの色は何色のガク片でしょうか?それがどのくらいの色変化があったのでしょうか?

というような実験方法に関するデータが必要ではありますが、一般的には次のように考えられます。

通常ガク片組織はクチクラ層で覆われており、水にうかべても水をはじきますので、浮かんだままかと思います。無理やり沈めて、かつ、時間をかければ、表面が傷ついてそこからなんらか内部にしみ込むこともあるかと思います。あるいは、茎がついていれば、そこの維管束系からいろいろなものが吸収されていきます。その結果として、細胞内にアルミニウムイオンが入って、結果的にアントシアニンと錯体を形成して青くなることはあるかもしれません。

植物の細胞も動物細胞と同様に、外界と細胞内を隔てる細胞膜があり、その外側に植物特有の細胞壁があります。細胞膜は物質の出入りに対して障壁となっており、どんな物質も自由に行き来できるわけではありません。それぞれ、特有の出入り口(チャネル、輸送体、ポンプ)を通ります。したがって、外から何らかの化合物で処理しても、出入り口が開いていなければ、細胞内にそのまま入るわけではありません。

pHの異なる水溶液で処理しても、細胞内のpHがそのとおりに変化しないのはこの理由です。むしろ、外の変化に対して、細胞内をいつも一定のイオン濃度やpHに保つことが生命の維持には必要です。ただし、完全に入るのを阻止できるのではなく、どこかに穴(漏れ)は有りますから、非常に濃い濃度の試薬で処理すると入ります。

土壌の酸性、アルカリ性によってアジサイの色が変るのは、酸性土壌だと土の成分に多量に含まれるアルミニウムが水溶性になるため、根から吸収されるからです。アルカリ性土壌ではアルミニウムイオンは水不溶ですので、吸収されません。吸収されたアルミニウムイオンは、導管を通って地上部へ運ばれ、ガク片に到達すると細胞内に入り、最終的にはアントシアニンの存在する液胞内に入ります。ここで、青色錯体となります。

アジサイの色の違いは、アルミニウムイオンの量にも影響されますが、実はそれ単独ではなく、液胞のpHや助色素(自身は無色でアントシアニンの発色を助ける有機分子)の構造やその量の違いにも影響されますので一概には言えませんが、細胞毎にそれらの数量に違いがあることは確かです。

吉田 久美(名古屋大学)
JSPP広報委員長、京都大学
河内孝之
回答日:2007-07-26
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