一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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紅葉するときには、なぜクロロフィルのみが分解されるのでしょうか?

質問者:   教員   sdmurakami
登録番号1344   登録日:2007-07-17
紅葉するときにはクロロフィルが分解されアミノ酸になるために、ほかの補助色素がのこって赤や黄色に色づくと聞いたのですが、なぜクロロフィルのみが分解されるのでしょうか?ご教示ください。
sdmurakami さま

紅葉はアントシアンが葉の表皮細胞でたくさん合成されるために紅く見えますが、紅葉初期ではクロロフィールはまだ葉肉細胞に残っています。黄葉はクロロフィールが分解され、葉緑体にクロロフィールと共存していたカロテノイドが残るために黄色になります。何れにしろ、秋になって気温の低下と共に、葉が老化して葉緑体の機能(特に二酸化炭素固定能力)が低下し、これに太陽光が照射されると葉緑体に活性酸素が生じやすく、この活性酸素はクロロフィールを分解しやすいため、先にクロロフィールが消失します(秋に低温と快晴が続くと紅葉が鮮やかになる原因)。ご質問のクロロフィールが消失しやすいのは、葉緑体でクロロフィール分子がこれと結合していた蛋白質から遊離した状態になって光照射を受けると、活性酸素の一つであり、反応性の高い一重項酸素が生じ、これがクロロフィール分子自身を分解するのが大きな原因です(自己光増感酸化反応)。これに比べ、カロテノイドは活性酸素を消去する機能をもち、アントシアンと同様、活性酸素によって分解されにくいため落葉するまで残ることが多いと考えてよいでしょう。

紅葉、黄葉についてはこれまで多くのご質問があり、質問登録番号0205, 登録番号0325, 登録番号0388, 登録番号0394, 登録番号0425, 登録番号0976, 登録番号1079, 登録番号1099, 登録番号1107の回答にいろいろな観点からの解説がありますので、これらをも参照して理解を深めてください。この他にも、本質問コーナーの検索で紅葉の語句で索引していただければ、さらに多くの回答が見られます。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2007-07-26