一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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植物の染色について

質問者:   中学生   あっこ
登録番号1348   登録日:2007-07-21
私は小学3年生の時に、白いバラの花を、食紅を使って染めました。食紅を溶かした水に花をつけて数時間待つときれいな黄色と赤と緑のバラの花ができました。また、茎を半分に切ると、赤と緑が半分づつ染まりました。もっといろんな色で染めてみようと思って、絵の具でも試してみたのですが、絵の具は染まりませんでした。どうして、絵の具は染まらないのでしょうか?
あっこ さん:

日本植物生理学会 みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。「植物の染色について」のご質問は標記の番号で受け付け、回答をお送りします。ご質問にある「食紅を溶かした水に花をつけて」というのは、「切り取った花の枝の切り口を食紅液につけた」ということですね。色素を使って花の色を変える実験は夏休みの自由研究なのでよく行われます。食紅ではうまく染まったけれども、絵の具では染まらなかった、ということですね。花が染まるのは、茎の切り口から道管という細い管をとおして食紅の色素が吸い上げられ、毛細血管のように発達している花弁(花びら)の道管まで達するからです。色素によっては花弁の細胞内に取り込まれるものもあります。さて、食紅と絵の具は何が違うのでしょうか。食紅は、水に溶けやすい、化学合成された毒性のない色素です。分子としては小さな部類に属します。一方、絵の具(この場合は水彩絵の具)では、いろいろな色を出すために、水に溶ける色素ばかりでなく、油にしか溶けない色素も使う必要があります。水に溶ける色素を使った絵の具も、色を安定化させるためにアラビアゴムという水に溶けやすい「のり」のような物質に溶けた状態に作られています。油にしか溶けない色素を使う場合には、色素を溶かした油を微粒子として「のり」のような水に溶けやすい物質の中に分散させてあります(牛乳のように)。さらに、顔料(がんりょう)といって、色の付いた無機物質を細かく砕いて「のり」に分散させたものもあります。たとえば、緑青(ろくしょう)は銅がさびたときにできる緑色の化合物(お寺の銅葺き屋根にできる緑色の物質)やラピスラズリという深い青色から藍色の岩石を砕いた微粒子は高級な顔料です。つまり、絵の具の色の元は分子の大きな「のり」にとかされていたり、微粒子になっていたりしますので、花の茎の中にある道管を通ることができないので、花弁までとどかないのです。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2007-07-26
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