一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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朝顔の色の変化

質問者:   その他   まるりん
登録番号1354   登録日:2007-07-26
はじめまして。小学校1年生の子を持つ母です。
私が子供の頃、祖父が庭先で朝顔を育てており、自分で押し花を作っては私にくれました。祖父はもう亡くなりましたが、「水色の朝顔は押し花にするとピンクになっちゃうんだよ。」と言っていた言葉が、強く心に残っていました。
子供が学校に上がり、朝顔の栽培をはじめたので、何気なくそのことを教えました。すると、とても興味を持ったらしく、水色の朝顔が咲いた日、「帰ってきたら押花にする」といって学校に出かけました。そして帰宅後、押し花にする前に水色の朝顔はピンク色に変色していました。その後、同様のことが、青紫の朝顔でも起こることに子供は気づき、「夏休みの自由研究にしたい」と言い出しました。
一緒に図書館に調べに行きましたが、学生向けの図鑑(朝顔のみのものも含めて)には、色の変化について記述がありませんでした。インターネットを使って調べたところ、いくつか掲載はありましたが、とても小学校1年生に理解できるようなものではありませんでした。
朝顔の色の変化について、小学校1年生が実験するとしたら、どのように行い、またどのようにアルカリ性・酸性といったことを理解させればよいでしょうか?まとめ方等についてもご指導いただければ幸いです。
まるりん さん:

日本植物生理学会 みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。夏休みになるとアサガオの話題が多くなります。きれいな花の色が変わる現象は、目立つことですので子ども達が興味をもつのは当然のことですね。私も、子どもの頃父が、咲かせた大輪のアサガオの花を大きさを記録するため直径が分かるように押し花にしていたことを想い出します。しかし、色がどうなったかまでは記憶にありません。
さて、この問題はpH、つまりアルカリ性、酸性といったことと関連しますので、小学1年生にも分かるようにすることはかなり難しいことのようですが、まず簡単な実験を試みられたらどうでしょうか。
お酢と重曹は家庭でも簡単に手に入る酸性とアルカリ性を示す代表ですね。お酢の味は「酸っぱい」としてよく知られていますが、重曹水の味も味わってもらって下さい。違いは、はっきりしていますから、酸っぱい味は酸性、「いがらっぽい味」(?)はアルカリ性と分かってもらえると思います。少し、極端なことかもしれませんが、本当の石鹸(中性洗剤ではありません)を少し水に溶かして、味わってもらっても構いません。たくさん飲み込んだりしなければ問題はありません。石鹸液はアルカリ性です。
次に、青色アサガオの花を、何枚か重ねた新聞紙の上に置いた画用紙の上におき、その上に画用紙をおいて花を挟みます。上の画用紙に、お酢か重曹水を直接刷毛で塗るか、別にお酢か重曹水に浸した画用紙を重ねます。さらにその上に2、3枚新聞紙を重ねて、木槌か木のブロックで花をつぶすように何度も叩きます。花の細胞が潰れると同時に、お酢や重曹水が混ざり下においた画用紙にしみこみます。花の下のおいた画用紙にどんな色がつくか子ども達に観察させて下さい。酸っぱい味と花の色、「いがらっぽい味」と花の色、どんな違いがあるのかよく分かると思います。お酢、重曹水ばかりでなく、石鹸水、レモンの絞り汁、砂糖水、塩水など、いろいろな水溶液に浸してつぶしてみて観察したら、面白い自由研究になると思います。
夏みかん、レモンなど多くの果物は「酸っぱい味」がします。この酸っぱい味は果物の細胞の中にある袋(液胞)に蓄えられています。実は、植物の葉や花の細胞にも液胞があって、その中はふつう酸性なのです。アサガオの花の色の元はアントシアニンという色素ですが、この色素は中性からアルカリ性で青色に、強い酸性で赤色になる性質を持っています。アントシアニンは花弁の一番外側にある細胞の液胞だけにあります。アサガオの花が元気なときはこの細胞は液胞を中性近くに保とうとエネルギーを使っていますので、青色を保っています。しかし、押し花にして一番外側の細胞ばかりでなく、内側にある細胞をつぶすと、たくさんある内側の細胞の液胞がこわれて全体として酸性になってしまいます。そのため、アントシアニンは赤く変色して花は赤くなる、といった仕組みです。ちなみに、青色アサガオの花も、午後になって萎れてくると赤くなりますね。それと同じ仕組みです。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2007-07-31
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