一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ペパークロマトグラフィーによる光合成色素の分離

質問者:   教員   森田保久
登録番号1356   登録日:2007-07-26
 高校では比較的よく行われている実験なのですが、研究の手法としては古いために、これに関して詳しく解説した文献が見あたりません。
 Rf値などは資料集に示されていますが、資料集によっても若干数字が異なったりしています。
 そこで、ペーパークロマトグラフィーによる光合成色素の分離について解説した本などがありましたら、ご紹介頂けないでしょうか。Rf値の出典も探したいと思っています。

 TLCも魅力的なのですが、高校生にとってろ紙という身近な材料の魅力を捨てきれずにいます。

 どうぞ宜しくお願い致します。
森田 保久 様

ペーパークロマトグラフィーは、生体成分それぞれの、濾紙に含まれる水と展開溶媒への分配比によって各成分を分離する方法です。この方法を巧みに用いて行った研究によって、過去、2回、ノーベル賞が与えられています。1958年、サンガーによるインスリンのアミノ酸配列の決定、そして1961年のカルビンによる光合成でのCO2固定経路の解明です。
 
(1) 図解フォーカス総合生物(太田次郎監修) 啓林館 (780 円)、p.48
上の本は植物色素のペーパークロマトグラフィーによる分離について、簡にして要を得た解説、注意すべき点などが述べられています。私の経験からしても、これに忠実に従って実験をすれば再現性のある結果が得られるでしょう。濾紙の種類によって、厚さ、水分含量が異なり、Rfに影響しますので、できれば一定の(タイプの)濾紙を使われるようお勧めします。

(2) 日本生化学会(編)生化学ハンドブックII, pp.1177-1178 (1980)にペーパークロマトグラフィーに適した濾紙のタイプなどが記されていますが、これはメーカーのカタログで充分でしょう。他の方法との比較がありますが、(1)の本以上のことは記されていません。

Rfの値は濾紙の種類、厳密には湿度による濾紙水分などによって影響を受けます。また、(1)に記されている注意、例えば、展開する容器を展開溶媒で充分に飽和させたかなどによっても影響を受けます。従って、(1)に記載されている葉の色素のRfは参考程度にとどめ、自分のデーターを信用して下さい。どの高等植物の葉にもあるクロロフィールa, b, キサントフィール、カロテンがこの順序で移動すれば成功と考えてよいと思います。ただ、新しい色素については、標準試料との対比がペーパークロマトグラフィーの場合は絶対に必要です。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2007-07-31
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