一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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学名の意味を知りたい。

質問者:   一般   hiroyuki
登録番号1365   登録日:2007-08-02
植物の学名の由来などを調べると楽しいので更にいろいろ調べたくなりました。が、ネットなどで検索して調べるのが主なのですが、私の調べ方が良くないのか由来のわからないものもあります。
で、現在登録されている学名の由来などを調べる方法はあるのでしょうか?

たとえば店頭でブルーデージーとして売られている
Felicia amelloides の amelloidesの意味がわからなくて困っています。
もしこれらの学名の意味を調べる方法があれば教えていただければと思います。

また新種の学名を登録する時はどうしてそのような名前を付けたのか
その命名にまつわるエピソードなども、付けて申請するのでしょうか?
それとも、命名の由来などは、書き添える必要はなく、何故そのような
名前になったのか判らない場合もあるのでしょうか?

植物の生理とは直接関係ない事かもしれませんが、学名は皆様仕事上良く使うでしょうし、ここで聞けば教えていただけるのではないかと思い質問させて頂きました。
よろしくお願いいたします。
hiroyuki さん:

学名に関するご質問の回答を植物分類、地理学がご専門の東京都立大学名誉教授 小野幹雄先生にうかがいました。学名の意味、新種の命名法など意外と知られていない面がありますね。

1)新学名がどこかに登録されて有効になると思っておられるようですが、これは誤解です。星や星座の発見命名は確かにそうなのですが、動植物の学名はそうではありません。命名者が「これは新種だ」と思えば、あるルールに従って命名、発表するだけで有効になります。後は他の研究者がそれに賛同してその名を使うか、それとも無視するか、だけの話です。
2)学名はラテン語かラテン語風の土語でつけられます。属の帰属には科学的な根拠が必要です。科学的根拠はいろいろな生育段階にあるいろいろな器官の形態ばかりでなく、最近では含まれるタンパク質やRNA、DNAの組成なども調べて決めています。また既知の(つまり既に学名が付けられている)種と明らかに違いがあることも必要条件です。
3)命名のルールはいろいろありますが、既に命名された名前と同じでないこと、は重要です。また植物の場合はその新種の特徴が少なくとも1行ぐらいはラテン語で説明されることも条件です。(説明の大部分は英語でもかまいません)。
4)学名の発表は印刷インクを用いて印刷された出版物で、かつ容易に手に入る(市販の)図書または雑誌に限ります。特定の人だけを相手にしたガリ版刷りや、パソコンプリンターで作られたものは有効でありません。
5)発表に当たって、既知の種類との違いを明記する事は大事ですが、命名の由来などを説明することは求められてはいません。恋人の名前でも、意味不明の語でも、ルールに合っていれば有効です。動物にJa ana という学名があるそうですが、これはじゃあな(蛇穴)というところで見つかった種類だそうですし、ある昆虫の学名にGeisha という名も使われています。もっとも現在はもっと客館的に形態上の特徴や産地の地名、研究者や献呈する人の名前などを付けることが一般的で、推奨されています。ルールではなく勧告(recommendation)としてですが。
7)学名にはラテン語が使われますので、意味を知るためにはラテン語の知識が必要です。牧野新日本植物図鑑(北隆館)の末尾に学名に使われているラテン語の解説が載っていますのでたいへん参考になります。
8)質問に例示されたブルーデージーの amelloides はamella またはamellus に似ているという意味で、多分、キク科のAmellus 属の植物に花か葉が似ているという意味です。日本にはないキク科の植物ですので、実際のAmellusを知らなければ「なるほど」とは納得できないかもしれません。

小野 幹雄(東京都立大学名誉教授)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2007-08-10