一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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色々な水での種の発芽

質問者:   小学生   はな
登録番号1374   登録日:2007-08-08
夏休みの自由研究に「色々な水で種は発芽するのか?」をやっています。
方法が間違っているのか5日たってもどれも発芽しません。アドバイスお願いします。

今やっているのは、水、しょうゆ、ポカリスエット、酢、サラダ油、石鹸水の6種類を使用して、小さなペットボトルの底を切った容器にキッチンペーパーをしき、それぞれ50ccを入れ朝顔の種が発芽するのかを見ています。水とポカリスエットが発芽すると思ったのですが、種に割れ目が入ってきてはいるものの目が出る様子がありません。

どうすればよかったのでしょうか?
はな さん

質問をありがとう。おもしろい思いつきですね。種子(生物学での正しい言葉)は確かに水分をやらないと発芽しませんね。でも、種子にもいろいろなタイプがあって、ただ水分を与えるだけですぐに発芽しない種類もたくさんあります。発芽の能力を得るためには一月以上も4℃前後の低い温度においてやらないと駄目なもの(リンゴなど)、光がないと発芽しにくいもの(レタス、タバコなど)、種子の形ができていても胚が未熟なもの(イチョウなど)、種皮が固くて中へ水や空気(酸素)が入りにくいものなどです。野生の植物の種子にはこういうタイプが多いのですが、栽培されているものは改良されていますから、たいてい水を与えればすぐ発芽します。ところで、実験にはアサガオ(生物学では生物の名前はカタカナで書くことになっています)の種子を使っているようですが、これは、ちょっと種類の選択が良くなかったですね。アサガオの種子はとても固い種皮をもっているので、ふつうはすぐには発芽しません。
アサガオを早く発芽させたい人はナイフなどで種皮に傷をつけてから水を吸わせます。薬で種皮を溶かすこともあります。だから、アサガオの種子をそろって発芽させることはむつかしいのです。生物の実験をする時は実験材料が揃っていることがのぞましいのです。そして、今回のような実験では、種子を水の中で発芽させるときにくらべて、ほかの液体では発芽はどのように違うのかを調べることになりますから、水での発芽が比較の基準になりますね。このような基準はどんな実験でも必要で、「対照ーたいしょう」といいます。もう一つ生物実験で大切なことは、材料の数をたくさんとるということです。その理由 は生物には個体差があるということです。だからたくさんの材料をつかって、平均の値で比較する方がのぞましいのです。この実験の場合数個の種子を使ったのでは、例外的な結果をみていることももあるかもしれません。そこで、次のような実験を試してごらんなさい。種子は一般に安くたくさん手に入りやすいものを選びます。小粒のものがようでしょう。ダイコン、コマツナなど家庭菜園で使われている野菜の種子がよいでしょう。種子を皿にあけて、できるだけ大きさのそろったものをえらびます。そして、調べたい液体の数だけのグループに分けます。せめて、1グループ20粒は使ってください。種子がたくさんあるのなら、もっと増やして下さい。つぎに、発芽させるためには種子を水や液体の中にどっぷり漬けてしまうのではなく、二重にしたペーパータオルを敷いて、その上に種子を置き、水または調べたい液体を種子がちょうどかぶさるていどまで入れます。入れ物をポリエチレン(ラップ)のシートでふたをし、同じ条件のところに置いて下さい。水分が蒸発して乾燥しないように同じぴったりとふたをして下さい。毎日観察し、芽(最初に種皮を破って出てくるのは根です)が出た種子の数を数えます。どれくらいの長さまで(例えば約1mm)根がでたら発芽とするか、基準を決めておくのがよいでしょう。ほかに、しょうゆや酢は濃度を変えてみるとか、果物のジューとかいろいろ試してみては。頑張って下さい。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2007-08-10