一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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根と茎の境目

質問者:   中学生   まき
登録番号1375   登録日:2007-08-13
学校の授業で、根と茎では道管の位置が変わる(師管と道管が入れ替わる)と聞きました。その師管と道管がいれかわる部分が根と茎の境目にあたると習いました。根では水分を吸水しやすいように、茎では水分が蒸発してしまわないようにだそうです。実際にみてみたいと思い、夏休みの課題もかねて、植物に食紅で色をつけて断面を観察してみようと思ったのですが、根の付いた状態で食紅水につけてもうまく色をつけることができません。根のある状態では色は付かないのでしょうか。それは植物によって違いますか。そもそも、仮に色が付いても肉眼では道管の移り変わりは見ることができないのでしょうか。また、すべての植物の道管の位置が変わるわけではないのですか。
まき さん:

日本植物生理学会 みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
ホウセンカなどの切り枝を食紅の液につけておくと、赤い色水が吸収されて赤い筋ができますね。まきさんが調べたいと思っている道管の中に赤い色水が吸い上げられているためです。ですから、道管がどんな風に並んでいるかを見ることができます。ところで、根のついたホウセンカではうまくいかなかったのですね。同じような質問が0950にありますので読んで下さい。植物は根を使ってチッソ、リン酸、カリウム塩などの栄養素を吸収しますので、水に溶けている食紅色素を吸収してもよいかなと思えますね。ところが、根で栄養素を吸収するためには、根の細胞を囲んでいる細胞膜という膜を通らなければなりません。栄養素が細胞膜を通過するときには、細胞膜にある特別の吸収装置を通っています。このような吸収装置は栄養素の種類を確認して通過させたり、通過させなかったりしています。根が吸収する水についてですら、水分子を通す専門の門をもっていて、この門を開けたり、閉じたりして水の吸収を調節しています。食紅の色素の多くは化学合成されたもので、根の細胞膜は食紅色素を通すような吸収装置をもっていないようです。そのため、食紅色素は道管に入ることができないのです。
まきさんの考えは正しいので、根と茎の境にある道管を染めることができれば、知りたいこと、つまり道管の並び方がどのように変化しているかが分かりますね。それでは、どうしたらよいでしょうか。根を切り取った茎の切り口を食紅液につければ、食紅は道管の中に吸収されますね。これは、茎の切り口には道管が直接口を開いていて、そこから食紅液が吸収されるからです。同じことは、根でも構いませんね。ホウセンカの根の先を半分くらい切り取ります。根と茎の境の部分は残っているはずです。その切り口を食紅色素につけておけば、色素は道管に吸収されます。十分に色素が茎の方に上がってきたときに、下から順に根を輪切りにしていって、道管の並び方がどんな風に変わっていくか調べることができるはずです。肉眼でもはっきり分かりますが、ホウセンカなどでは拡大鏡(虫眼鏡など)を使えばもっとはっきり分かると思います。ダイコン、カブなどでも同じような実験をしてみたらどうでしょうか。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2007-08-20
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