一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

チェックリストに保存

花ガラを積む訳は?

質問者:   一般   hiroyuki
登録番号1385   登録日:2007-08-20
園芸の世界ではよく花を咲かせるために咲き終わった花を取り除いて
しまうように教えられますが、
 その理由として漠然と種子ができたら、そちらに栄養を取られてしまい、
花がたくさん咲かなくなってしまうからと、勝手に考えていました。
 しかし、最近はたしてそれだけなのだろうか?ひょっとしたら、種子ができつつある部分、あるいは種子ができなくとも(花は咲けども種子のできないものもありますよね)、その咲き終わった部分に積極的に次の開花をを抑制するような働きがあるのではないかと思うようになりました。
 花の咲き終わったもの(ハナガラ)には栄養を取ってしまう以外に次に咲く花の開花を抑制する働きは
あるのでしょうか? よろしくお願いいたします。
hiroyuki さん:

日本植物生理学会 みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
庭の花をいつも美しく保つためには、きちんとした栽培管理が大切なことですね。散水、施肥、除草などと同じく「花柄摘み」も大切な管理手段の一つです。その目的には、美観の維持、樹(草)勢の維持、開花の促進、病気の予防の4点が挙げられます。種類によって早い遅いの違いはありますが、花が咲き、受粉が終われば花弁は萎凋、変色します。鑑賞を目的とする花卉ではこのような「人間から見たみにくさ」を、除くのが美観の維持にあたります。また、萎凋した花びらなどは細胞が老化したり、死んだりしていますので容易に病原体の攻撃を受けることになります。これらを摘み取ることは病気の予防に役立ちます。受粉が終わると種子形成がはじまりますが、次世代の初期生育を保証するだけの栄養物を種子に貯蔵しますので非常にたくさんのエネルギーを必要とします。鑑賞に必要ない種子形成をさせないことで母体の活力(樹・草勢)を維持する効果があります。花(花序)の付き方には、枝(茎)の先端につく頂生と葉の付け根につく腋生の2つの型があります(イチジクなどのように茎、枝から直接花ができる場合もありますが)。頂生の花を摘むことは、茎の先端を切り取ることと同じで、下部の腋芽の成長を促します。そのため茎(枝)の先端が新たにできますので頂生の花が咲くことを促進します。また、腋生の場合も似たようなもので、腋生花芽は1つだけでなく、2、3個から数個が形成されています。しかし、腋生花芽の中にも花の咲き方には順序があって、上位の花が咲いている間は、下位の花芽は生育が抑えられています。上位の花を摘めば、下位の花が生育をはじめますので、続いて花が咲くという具合です。頂生花の場合も腋生花の場合も、植物に一般的に見られる「頂芽優勢」という現象です。すでにある頂芽(花)が下位の腋芽(花)の生育を「抑制」していますが、最近の研究では、腋芽の生育を促進する植物ホルモンの合成を抑制していることが明らかにされています。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2007-08-24
植物 Q&A 検索
Facebook注目度ランキング
チェックリスト
前に見たQ&A
入会案内