質問者:
一般
やよい
登録番号1386
登録日:2007-08-20
はじめましてみんなのひろば
アオモジの雄株に実ができているのですが?
わたしはここ5年来、生駒山系で四季を通して動植物の観察をしている自然大好き人間です。
今回、教えていただきたいのはアオモジについてです。
標高300メートルに生えている直径20センチ余りの雄株。
寒い冬を乗り切った蕾が毎年3月末〜4月にかけて
枝先にぎっしりの雄花を咲かせます。
遠くからでも「ああ、今年もアオモジが咲きはじめた!」と感激しています。
それがどうしたことかこの夏、青い実をつけ始めました。
主幹から出ている枝、それも2〜3の枝に限られているようですが
まるで雌株につくような実です。
ただ、つきかたは疎らです。
樹木ではヒサカキが環境の変化で性転換をするらしいのですが
アオモジにもそのような性質があるのでしょうか?
植物は一般的に樹勢が衰えはじめると子孫を残すために
多くの花を咲かせたり結実するという経験はいままで多くみてきました。
今回のように、雌雄別種でも雄株に実ができる事があるのでしょうか?
レモンの花のように不完全花が混在しているものなら理解できるのですが・・・・
お教えいただければ幸いです。
写真は写してありますがサンプル採取はまだです。よろしく!
やよい さん:
日本植物生理学会 みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
ご質問の回答を、森林総合研究所の田中 浩先生に伺ったところ、次のようなご丁寧な解説、回答を頂きました。性の転換とか、先祖帰りとか、植物では動物と違っていろいろ予想外のことがおきますが、その仕組みには分からないことがたくさんあるようです。是非、観察を続けて下さい。
いくつかの植物では、性転換を起こす事が知られています。
草本類でもっともよく知られているのは、テンナンショウ(マムシグサ)の仲間です。雌として種子生産を行うにはコストがかかるため、小さいサイズの間は雄でいて、一定のサイズより大きくなって(多くの資源を投資できるようになって)から雌となると考えられています。
樹木では、雌雄異株とされてきたもののうち、カエデの仲間(ウリハダカエデ A. rufinerveやアメリカのA. pensylvanicum, A. grandidentatum, A. rubrumなど)や、ネズミサシの仲間(Junipers australis, J. osteosperma)で性転換が報告されています。私の観察では、ウリカエデでも性転換は起こっています。お尋ねのアオモジと同じクスノキ科の樹木3種(Ocotea tenera, Lindera benzoin, Laurus azorica) でも、性転換が知られています。どのような条件で性転換が起こるのか、その樹木の生活史の中でどれだけ安定した性質なのかなどの点については、まだまだわかっていない例が多いと思います。ウリハダカエデやA. pensylvanicumでは、庇陰や強い乾燥などの環境ストレスが、雄から雌への性転換を起こしているのではないかと指摘されています。また、個体レベルではなく、枝レベルでの性転換も観察されています。
ヒサカキについては、北九州博物館の真鍋さんの報告(Manabe, T. Bull. Kitakyushu Mus. Nat. Hist., 15: 137-144, 1996.)では、雄花だけをつける雄個体、雌花と偽両性花(機能的には雌花)をつける雌個体、雄花と両性花を着ける両性個体の3種類の個体が混じっている事を報告しています。性転換についての研究報告は見つかりませんでした。アオモジについては、まだきちんとした研究例はないようです。外国産ですが比較的近縁のLindera benzoinでの報告もありますので、ご覧になられた現象は性転換がおきた可能性が高いと考えられます。また、性が安定した性質ではなく、たまたまその個体に生じた性質かも知れません。
雌雄両全性から雌雄異株への進化の間には、さまざまな変わった性表現のタイプが知られています。でも、個々の樹木の性表現については、まだまだ不明な点が多いのです。多くの個体を継続観察して初めて何が起こっているかを知る事ができます。ぜひ、観察を続けて見て下さい。
田中 浩(森林総合研究所)
日本植物生理学会 みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
ご質問の回答を、森林総合研究所の田中 浩先生に伺ったところ、次のようなご丁寧な解説、回答を頂きました。性の転換とか、先祖帰りとか、植物では動物と違っていろいろ予想外のことがおきますが、その仕組みには分からないことがたくさんあるようです。是非、観察を続けて下さい。
いくつかの植物では、性転換を起こす事が知られています。
草本類でもっともよく知られているのは、テンナンショウ(マムシグサ)の仲間です。雌として種子生産を行うにはコストがかかるため、小さいサイズの間は雄でいて、一定のサイズより大きくなって(多くの資源を投資できるようになって)から雌となると考えられています。
樹木では、雌雄異株とされてきたもののうち、カエデの仲間(ウリハダカエデ A. rufinerveやアメリカのA. pensylvanicum, A. grandidentatum, A. rubrumなど)や、ネズミサシの仲間(Junipers australis, J. osteosperma)で性転換が報告されています。私の観察では、ウリカエデでも性転換は起こっています。お尋ねのアオモジと同じクスノキ科の樹木3種(Ocotea tenera, Lindera benzoin, Laurus azorica) でも、性転換が知られています。どのような条件で性転換が起こるのか、その樹木の生活史の中でどれだけ安定した性質なのかなどの点については、まだまだわかっていない例が多いと思います。ウリハダカエデやA. pensylvanicumでは、庇陰や強い乾燥などの環境ストレスが、雄から雌への性転換を起こしているのではないかと指摘されています。また、個体レベルではなく、枝レベルでの性転換も観察されています。
ヒサカキについては、北九州博物館の真鍋さんの報告(Manabe, T. Bull. Kitakyushu Mus. Nat. Hist., 15: 137-144, 1996.)では、雄花だけをつける雄個体、雌花と偽両性花(機能的には雌花)をつける雌個体、雄花と両性花を着ける両性個体の3種類の個体が混じっている事を報告しています。性転換についての研究報告は見つかりませんでした。アオモジについては、まだきちんとした研究例はないようです。外国産ですが比較的近縁のLindera benzoinでの報告もありますので、ご覧になられた現象は性転換がおきた可能性が高いと考えられます。また、性が安定した性質ではなく、たまたまその個体に生じた性質かも知れません。
雌雄両全性から雌雄異株への進化の間には、さまざまな変わった性表現のタイプが知られています。でも、個々の樹木の性表現については、まだまだ不明な点が多いのです。多くの個体を継続観察して初めて何が起こっているかを知る事ができます。ぜひ、観察を続けて見て下さい。
田中 浩(森林総合研究所)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2007-08-24
今関 英雅
回答日:2007-08-24