質問者:
一般
hihi
登録番号1390
登録日:2007-08-21
原始の地球でのCO2が生物の光合成によって今の地球のバランスなったわけですが、極端なことを言えば今まで蓄えてきたあらゆる炭素を燃焼させてしまえば原始の地球に戻るということでしょうか?また、一本の木が炭酸ガス状態の炭素を光合成により木の組織に組み込むとき平均して炭酸ガス1トンに対して植物組成での重量はどのくらいになるでしょうか?それぞれの種類、組織によって多少の違いはあると思うのですが、平易にご説明願います。
地球上で樹木とそれ以外の植物ではどちらが炭素固定が多いでしょうか
hihiさま
太陽系の一つの惑星として地球ができたのは46億年前ですが、このとき地球の大気に最初にあった気体成分はすべて失われ、大気成分はすべて地中からのガス(火山ガス)に由来すると考えられています。火山ガスにはCO2(炭酸ガスは化学的に正しくないため、二酸化炭素と最近よばれています)が含まれているため初期の地球の大気にはCO2 が数十気圧もあり、現在の大気にある量(1気圧の大気で0.038%;0.00038気圧)に比べ非常に多かったようです。しかし、徐々に地球が冷え、水が貯まるにつれCO2 は水に溶け、カルシウムと結合して石灰岩となり、大気CO2は大部分、岩石として固定化されました。残ったCO2を固定して有機物を合成する光合成細菌、シアノバクテリアによる光合成が38〜35億年前から始まり、現在の地球上の有機物は、動物、微生物を含め、大部分が藻類、陸上植物の光合成産物に由来しています。
シアノバクテリア以降の酸素発生型光合成を行う藻類、陸上植物の光合成は全体として次の式で表すことができます。
CO2 + 2 H2O* → (太陽光エネルギー) → (CH2O) + O*2 + H2O
この式は、植物は太陽光エネルギーを利用してCO2を水によって還元し、(CH2O)で示される炭水化物(糖、デンプン、セルロースなど)を合成すること、同時に、2 分子の水の成分である酸素(O*)から酸素分子(O2*)が発生することを示しています。植物体内では炭水化物から脂質、蛋白質など多種、多様な成分が合成されますが、樹木など多年生植物で蓄積されている成分の大部分はセルロースのような炭水化物であるため、CO2と光合成によって植物が固定、蓄積される重さの比はそれぞれの分子量の割合になります。ご質問の1トンのCO2から光合成によって、樹木に0.68トンの炭水化物が蓄積することになります。
このような換算は簡単ですがわずらわしいため、現在、地球環境科学の分野では、CO2-炭素、光合成固定-炭素のように、炭素の重さで比較するようになっています。例えば、現在の地球での炭素の循環を考えるための基本数値は、以下のように炭素の重さで相互に比較します(単位:億トン)。(Newton(ニュートン)27巻 8号(2007))
1)大気CO2-炭素:7600
2)海洋の(無機)炭素(CO2、HCO3-): 380000
3)過去の光合成産物である石油-、石炭-炭素 : 39440
4)植物-炭素、土壌-炭素 : 25410
5)1年間の光合成によって固定される-炭素:1226/年
6)1年間の大気CO2-炭素の増加速度: 34/年
ちなみに、光合成によって固定される炭素のうち、約50%近くが海洋での藻類の光合成によるものであり、約40%が森林での光合成、残りの約10%が平地での主として草本植物による光合成によるものです(Field et al. Science, 281: 237-240(1998))。
ご質問の地球上でのこれまでの光合成産物の貯えをすべて燃焼させることは、上の表の3)、4)項目の炭素をすべて燃焼させることに相当しますが、これによって61850億トンの炭素に相当するCO2が大気中に放出されることになります。これから、1)の現在の大気CO2-炭素と比べ、大気CO2濃度がどれだけ上昇するかを求めることができます。
太陽系の一つの惑星として地球ができたのは46億年前ですが、このとき地球の大気に最初にあった気体成分はすべて失われ、大気成分はすべて地中からのガス(火山ガス)に由来すると考えられています。火山ガスにはCO2(炭酸ガスは化学的に正しくないため、二酸化炭素と最近よばれています)が含まれているため初期の地球の大気にはCO2 が数十気圧もあり、現在の大気にある量(1気圧の大気で0.038%;0.00038気圧)に比べ非常に多かったようです。しかし、徐々に地球が冷え、水が貯まるにつれCO2 は水に溶け、カルシウムと結合して石灰岩となり、大気CO2は大部分、岩石として固定化されました。残ったCO2を固定して有機物を合成する光合成細菌、シアノバクテリアによる光合成が38〜35億年前から始まり、現在の地球上の有機物は、動物、微生物を含め、大部分が藻類、陸上植物の光合成産物に由来しています。
シアノバクテリア以降の酸素発生型光合成を行う藻類、陸上植物の光合成は全体として次の式で表すことができます。
CO2 + 2 H2O* → (太陽光エネルギー) → (CH2O) + O*2 + H2O
この式は、植物は太陽光エネルギーを利用してCO2を水によって還元し、(CH2O)で示される炭水化物(糖、デンプン、セルロースなど)を合成すること、同時に、2 分子の水の成分である酸素(O*)から酸素分子(O2*)が発生することを示しています。植物体内では炭水化物から脂質、蛋白質など多種、多様な成分が合成されますが、樹木など多年生植物で蓄積されている成分の大部分はセルロースのような炭水化物であるため、CO2と光合成によって植物が固定、蓄積される重さの比はそれぞれの分子量の割合になります。ご質問の1トンのCO2から光合成によって、樹木に0.68トンの炭水化物が蓄積することになります。
このような換算は簡単ですがわずらわしいため、現在、地球環境科学の分野では、CO2-炭素、光合成固定-炭素のように、炭素の重さで比較するようになっています。例えば、現在の地球での炭素の循環を考えるための基本数値は、以下のように炭素の重さで相互に比較します(単位:億トン)。(Newton(ニュートン)27巻 8号(2007))
1)大気CO2-炭素:7600
2)海洋の(無機)炭素(CO2、HCO3-): 380000
3)過去の光合成産物である石油-、石炭-炭素 : 39440
4)植物-炭素、土壌-炭素 : 25410
5)1年間の光合成によって固定される-炭素:1226/年
6)1年間の大気CO2-炭素の増加速度: 34/年
ちなみに、光合成によって固定される炭素のうち、約50%近くが海洋での藻類の光合成によるものであり、約40%が森林での光合成、残りの約10%が平地での主として草本植物による光合成によるものです(Field et al. Science, 281: 237-240(1998))。
ご質問の地球上でのこれまでの光合成産物の貯えをすべて燃焼させることは、上の表の3)、4)項目の炭素をすべて燃焼させることに相当しますが、これによって61850億トンの炭素に相当するCO2が大気中に放出されることになります。これから、1)の現在の大気CO2-炭素と比べ、大気CO2濃度がどれだけ上昇するかを求めることができます。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2007-08-27
浅田 浩二
回答日:2007-08-27