一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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水遣りによる葉焼けのメカニズム?

質問者:   一般   hiroyuki
登録番号1407   登録日:2007-08-27
夏の日差しのもとで植物の葉に水をかけると
葉焼けする事があるますが、それは何故でしょうか?
観葉植物にいきなり強い日光にあてると葉焼けしたりしますが、
それとは違う原因によるものだと思うのですが、その葉焼けのメカニズムを
教えていただければ幸いです。
 よろしくお願いいたします。
hiroyuki さん:

日本植物生理学会 みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
「葉やけ」という言葉は園芸用語で、植物の葉の色が、通常とは違って変色した部分ができる現象全般を指しているようです。そのため、「葉やけ」にはいろいろな原因があります。もっとも典型的な「葉やけ」は曇天などが続いて、弱い光の下におかれていた植物が、突然強い光に照射された場合、葉の一部の緑色が薄くなったり(ひどいときは白色化)、葉の周辺が褐色となって部分的に枯死したようになったりします。また、植物は種類、品種によって弱い光を好むものがたくさんあります。特に観賞用植物は屋内などで栽培するので弱い光に適応したものが多くあります。このような、弱い光を好む植物を、真夏の屋外など、強い光のもとにおけば必ずといってよいほど「葉やけ」をおこします。このような「葉やけ」が起こる仕組みには2つのことが指摘されています。第1は、強い光のもとにおかれると、光合成に利用される光エネルギー以外の光エネルギーが余り、そのため活性酸素が発生します。活性酸素は細胞にとって悪玉で、いろいろな悪さをします。葉緑素を分解したり、細胞内の遺伝子に変化を起こしたり、結果として細胞を殺したりします。そのため、葉が部分的に変色したり、死んだりする「葉やけ」がおきることになります。第2に、似たようなことですが、生物の細胞は高い温度に弱く、耐えられる限界の温度をもっています。この限界の温度を超える温度に急激にさらされると細胞は非常に弱るか、死んでしまいます。そのため、いきなり強い光の下におかれると葉の温度が急上昇し、限界の温度を超えて「葉やけ」をおこすと考えられています。しかし、ふつうはこのように「いきなり」強い光のもとにおかれることはなく、熱帯でも朝の低い温度から、徐々に高温になっていきます。植物は、このように徐々に温度を上げられると高温耐性を獲得するので、限界温度を超えるような熱帯地方でも、葉やけを起こすことなく生育することができます。
さて、ご質問に「夏の日差しのもとで植物の葉に水をかけると葉焼けする事があるが」とありますが、園芸では一般に「夏の日差しのもとで植物の葉に水をかける」ことはやってはいけないことの1つです。その理由は、夏の日差しのもとでは葉の温度がかなり高くなっています。そこへ、冷たい水を急にかけてやれば、「冷水に飛び込んだ」と同じことで細胞は急激に活性が低下し、有り難いことではありません。光合成活性ももちろん急激に低下します。そのため、夏の日差しのもとで何とかバランスをとって活性酸素の処理をしていたものが、急に光合成活性が低下しますので、余った光エネルギーで活性酸素が発生し、その影響を受けたためと考えられます。しかし、盆栽に使うサツキなどは、葉温度を下げるためにわざと日中に散水することがありますので、植物種の個性を考えながら栽培管理をする必要があります。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2007-08-28
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