質問者:
一般
ooo
登録番号1438
登録日:2007-10-14
微細藻類を含む藻類にC4植物とみなされる種はいますか?みんなのひろば
微細藻類を含む藻類にC4植物とみなされる種はいますか?
私が調べた限りでは、微細藻類を含む藻類にC4植物と同様の光合成機能を持つ種はみつかりません。もし、そのような種がいたら教えて下さい。
基本的な質問ですみません。藻類の定義がよく分かりません。
何をもって定義されているのか教えて頂けたら幸いです。
いろんな資料をみればみるほど、混乱します。
また、微細藻類の定義も分かりません。
藍藻を含む人もいますし、そうでない人もいます。
地衣類やコケ植物は、入ると考えてよいのでしょうか?
地衣類の場合は、菌類に分類されていますが、
シアノバクテリアと共生する種があるために、微細藻類にも分類されるのでしょうか?
お手数をおかけして申し訳ありません。
何卒よろしくお願い致します。
ooo 様
本コーナーに質問をお寄せ下さりありがとうございました。
研究者は明確に定義された用語を用いて議論している筈ですが、知識は絶えず増加していますので、知識を体系化して用語を再定義することが求められるような事態がしばしば生じます。しかし、この作業は遅れがちです。ご質問には、神戸大学・内海域環境教育研究センターで藻類の生理や進化について研究されている村上明男先生からご回答をいただきました。ご参考にして下さい。
(村上先生からの回答)
C4植物は、一般的な炭酸同化系であるカルビン・ベンソン回路のほかに、二酸化炭素を大気から直接仮固定するC4回路を併せもち、これら2つの回路を葉の異なる組織細胞に隔離して配置しています。最近のゲノム解析や生理実験の中から、ある種の珪藻の炭酸同化反応にC4回路の酵素が関与するとの結果も報告されていますが、まだ全貌の解明にはいたっていません。
用語について:
藻類の定義などで混乱するのは当然のことかもしれません。多くの「用語」は厳密に定義されている訳ではなく、研究の成果や慣習から一般的なコンセンサスとして使われていると思います。したがって、研究者によって使い方が異なる場合もあります。
日本では、「藻」は、古来より水の中に生育する水草、海藻、海草、藻などの総称として一般的に使われてきており、英国の植物学の辞書では、“根茎葉などを分化しない比較的単純な真核の植物をよぶ慣用名である(分類名ではない)”と書かれています。一方、「澡」には“水をたくみにつかいこなす”との意味があり、“くさかんむり”のついた「藻」は“水中特有の環境を巧みに利用して生きている植物”を表すのに相応しい漢字だと思います。
以下に、ご質問にある用語について整理してみます。
藻類:
藻類学の教科書には、藻類は、「コケ、シダ、裸子・被子植物以外の、酸素発生を伴う光合成を行う生き物」などと書かれています。かなりいい加減な定義のように思えますが、藻類には陸上植物とは比較にならないくらい、進化的に多様な生物群が含まれているため、藻類に含まれる全ての生物群の最大の共通点である“光合成機能”を定義に利用しています。
大型藻類:
肉眼で認識できるほどの大きさの藻類で、細胞が2次元的・3次元的にたくさん集まって大きな体を作っています。中には、根、茎、葉に類似した形態を分化するものもいます。食用にしているワカメ、コンブ、ノリといった“海藻”も大型藻類です。
微細(微小)藻類:
一般的に、顕微鏡下で認識できる程度の大きさの藻類を指します。植物プランクトンとして知られているように単細胞性のものが多く見られますが、沢山の単細胞が集まった群体性のものや細胞が一列あるいは枝分かれしながら繋がった糸状体のものも含まれます。
藍(ラン)藻:
最近の研究から、藍藻は原核生物、すなわち細菌(バクテリア)の仲間であることがわかっています。そのため、(特に学術的には)藍藻を“シアノバクテリア”あるいは“藍色細菌”と呼ぶことが多くなりました。しかし、酸素を出さない光合成系をもつ光合成細菌などと明確に区別する必要もあり、また酸素発生という生物機能を重視するためにも、藍藻と言う呼び名も捨てがたい状況です。なお、藻類としての藍藻は、微細藻類に区分されています。
地衣類:
宿主である菌類の組織内に、微細藻類(緑藻や藍藻)が共生体として棲んでいるものを呼びます。微細藻類はあくまで“居候の身”として扱われるので、宿主を基準にして、“地衣類=菌類”と分類されています。渦鞭毛藻などの微細藻類と共生しているサンゴやクラゲを藻類と呼ばないことと同じです。
本コーナーに質問をお寄せ下さりありがとうございました。
研究者は明確に定義された用語を用いて議論している筈ですが、知識は絶えず増加していますので、知識を体系化して用語を再定義することが求められるような事態がしばしば生じます。しかし、この作業は遅れがちです。ご質問には、神戸大学・内海域環境教育研究センターで藻類の生理や進化について研究されている村上明男先生からご回答をいただきました。ご参考にして下さい。
(村上先生からの回答)
C4植物は、一般的な炭酸同化系であるカルビン・ベンソン回路のほかに、二酸化炭素を大気から直接仮固定するC4回路を併せもち、これら2つの回路を葉の異なる組織細胞に隔離して配置しています。最近のゲノム解析や生理実験の中から、ある種の珪藻の炭酸同化反応にC4回路の酵素が関与するとの結果も報告されていますが、まだ全貌の解明にはいたっていません。
用語について:
藻類の定義などで混乱するのは当然のことかもしれません。多くの「用語」は厳密に定義されている訳ではなく、研究の成果や慣習から一般的なコンセンサスとして使われていると思います。したがって、研究者によって使い方が異なる場合もあります。
日本では、「藻」は、古来より水の中に生育する水草、海藻、海草、藻などの総称として一般的に使われてきており、英国の植物学の辞書では、“根茎葉などを分化しない比較的単純な真核の植物をよぶ慣用名である(分類名ではない)”と書かれています。一方、「澡」には“水をたくみにつかいこなす”との意味があり、“くさかんむり”のついた「藻」は“水中特有の環境を巧みに利用して生きている植物”を表すのに相応しい漢字だと思います。
以下に、ご質問にある用語について整理してみます。
藻類:
藻類学の教科書には、藻類は、「コケ、シダ、裸子・被子植物以外の、酸素発生を伴う光合成を行う生き物」などと書かれています。かなりいい加減な定義のように思えますが、藻類には陸上植物とは比較にならないくらい、進化的に多様な生物群が含まれているため、藻類に含まれる全ての生物群の最大の共通点である“光合成機能”を定義に利用しています。
大型藻類:
肉眼で認識できるほどの大きさの藻類で、細胞が2次元的・3次元的にたくさん集まって大きな体を作っています。中には、根、茎、葉に類似した形態を分化するものもいます。食用にしているワカメ、コンブ、ノリといった“海藻”も大型藻類です。
微細(微小)藻類:
一般的に、顕微鏡下で認識できる程度の大きさの藻類を指します。植物プランクトンとして知られているように単細胞性のものが多く見られますが、沢山の単細胞が集まった群体性のものや細胞が一列あるいは枝分かれしながら繋がった糸状体のものも含まれます。
藍(ラン)藻:
最近の研究から、藍藻は原核生物、すなわち細菌(バクテリア)の仲間であることがわかっています。そのため、(特に学術的には)藍藻を“シアノバクテリア”あるいは“藍色細菌”と呼ぶことが多くなりました。しかし、酸素を出さない光合成系をもつ光合成細菌などと明確に区別する必要もあり、また酸素発生という生物機能を重視するためにも、藍藻と言う呼び名も捨てがたい状況です。なお、藻類としての藍藻は、微細藻類に区分されています。
地衣類:
宿主である菌類の組織内に、微細藻類(緑藻や藍藻)が共生体として棲んでいるものを呼びます。微細藻類はあくまで“居候の身”として扱われるので、宿主を基準にして、“地衣類=菌類”と分類されています。渦鞭毛藻などの微細藻類と共生しているサンゴやクラゲを藻類と呼ばないことと同じです。
神戸大学・自然科学系先端融合研究環・内海域環境教育研究センター
村上 明男
回答日:2007-10-23
村上 明男
回答日:2007-10-23