一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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種子の発芽促進方法

質問者:   一般   コシ
登録番号1440   登録日:2007-10-16
 キノコとコウボウムギの関係をアマチュアの立場で調査研究をしております。
コウボウムギを発芽させるため。種子を濃硫酸処理をしたく、方法について教えて下さい。
 又、ジベレリンの処理の併せて行う予定ですが、ジベレリンは何%で何分が望ましいも教えて下さい。
コシ様

コウボウムギの発芽の研究は少ないのですが、二つ特徴があります。一つは発芽のために後熟が必要で、この場合はいわゆ低温湿潤処理がもとめられます。
実験的にやる場合は吸水した種子を約4℃で1か月余置いたあと、室温(25℃位)に戻すと発芽を始めます。この性質から考えると、ジベレリン処理は低温処理に代わりうるでしょう。ジベレリンにはたくさんの種類がありますが、一般に実験に使われるのはGA3です。また、農薬として市販されているものも、普通はGA3です。ただし、市販のジベレリンは試薬でない限り、増量剤や添着剤等がふくまれていますので、何パーセントとかと聞かれてもお答えできません。ふつういろいろな低温要求種子をジベレリン(GA3)で発芽誘導させる場合は、濃度によって発芽率がちがいます。どの濃度が最適かは、勿論種によっても異なりますが、純粋ジベレリンで0.1〜10mg/lになるよう、手持ちのジベレリンで溶液を調整してた試してみて下さい。種子を処理するときは、ジベレリンの溶液で湿らせたろ紙などの上に種子を並べて、乾燥しないような状態で放置します。暗い所の方が良いかもしれません。
もう一つの性質は種皮が固いので、吸水が簡単でないことです。自然の状態では、微生物やカビなどで種皮がくずれたり、あるいは、何らかの機械的は原因で傷がついたりして、吸水が容易になります。硫酸で処理をするのは固い皮を人為的にはやく軟化させるためです。しかし、下手をすると、溶けてしまって 失敗することがあります。コウボウムギの種子は何分くらいが良いかは実際に自分で試してみるのが一番です。硫酸処理については、コウボウムギの種子発 芽条件のついて論文(*)を書いておられる群馬大学社会情報学部環境科学の石井真一先生にうかがいました。論文の実験では濃硫酸に15分付けたそうで す。しかし、そのご、15分では長過ぎて溶けてしまうという情報があったので、種子がどこで採取されたかによって、種皮の固さも同じではないと考えら れます。新しい実験を始める場合は、いろいろと自分でまず条件をを決めることが大切です。なお、硫酸処理の時間は果皮を取り除いた種子についてのもの です。果皮を取り除くのは面倒ですが、つけたままだと、硫酸の浸透の早さに差が出て、均一にはなりがたいようです。
いろいろと試してみてください。
*Ishikawa,S.-I. et al (1993) Germination requirements in Carex kobomugi (Sea Isle). Journal of Plant Research Vol.106, p.245-248.
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2007-10-23
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