一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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もみじが紅葉することを発現さしている遺伝子はどこにあるか?

質問者:   高校生   みき
登録番号1447   登録日:2007-10-25
私はサイエンス部の生物班にいるのですが、自分たちが興味のあることを調査・研究するという事で、もみじの遺伝子的特徴を調べたいと考えているところです。資料集や教科書、本で調べても載ってなかったことをこの際偶然友達の紹介で知ったこの質問コーナーで一つ質問したい事があります。
もみじが紅葉することを発現さしている遺伝子はどこにあるのか?どこを探しても見つからなかった答えですが、説明・解説お願いします。
みき さん:

日本植物生理学会 みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
いろいろな自然現象に関する疑問を自分で調べることは大切なことです。しかし、何を調べるのか、何を知りたいのかをはっきりさせないと、調べることもできないと思います。
「もみじが紅葉することを発現さしている遺伝子はどこにあるか?」とのご質問ですが、「遺伝子はどこにあるか」とは何をお知りになりたいのかが分からないところです。おそらく遺伝子というものの理解が十分でないか、誤解されているからだと思いますので、まず、簡単に遺伝子についてご説明します。遺伝子はある1つのタンパク質(酵素などはタンパク質ですね)の構造を決めている設計図だということは学校でも習ったことだと思います。生物が特有の形を作ったり、成長したり、生きることができるのはたくさんの種類のタンパク質が順番に働いているからです。ここで、ある遺伝子が特定のタンパク質を作る指令を出すことを「遺伝子が働く」と言っています。ですから、たくさんの遺伝子が順番に働いて、必要なタンパク質を作ることを指示していることになります。この「たくさんの遺伝子」は1つのセットなっていて、その生物全体の形作り、生き方を決める「総合設計図」となっています。この「たくさんの遺伝子のセット」はその生物の「すべての細胞」に含まれています。「遺伝子はどこにある」の答えは「細胞の中にある」ということになります。葉の中にある緑の細胞も、根の先にある白い細胞も、花びらの色づいた細胞も、紅葉した葉の細胞も、すべて同じ内容の遺伝子セットを持っています。細胞の中でも、大部分の遺伝子は核の中にありますが、ミトコンドリア、植物ではさらに葉緑体の中にも遺伝子があります。
それでは、どうして葉が緑色で根は白いのか、どうしてダイコンの根は白いのにニンジンの根は赤いのか、どうして赤い花が咲いたり黄色い花が咲いたりするのか、どうして緑の葉が紅葉するのか、たくさんの疑問がわきますね。それは、遺伝子セットにあるすべての遺伝子が同時に働くのではなく、順番に必要な遺伝子群だけを働かせるからです。葉の細胞に光があたると葉緑素を作る遺伝子群が働いて葉緑素が出きるけれども、根の細胞ではその遺伝子群が働かないので葉緑素ができないのです。花ができるときも、茎の先端や葉の付け根で花を作るために必要な遺伝子群が働きます。それが働かなければ茎や葉を作り続けるのです。「紅葉するのに関わる遺伝子」を調べるときに、紅葉とは何か、赤いのはどうしてか、と言った疑問を順番に調べていけば、分かると思いますので、あえて答えを書かないことにします。できるだけ調べた上でなお、疑問の点があれば、またこの質問コーナーに質問してください。
最後に大事なことを加えますと、上に述べた遺伝子が働いたり、働かなかったりするのはどうしてかの疑問が残ります。今、分かっていることは、生物は加齢(細胞が新しく作られてからどのくらい時間が経っているか)や環境条件(光の強さや質、明暗リズム長さ、温度の変化、水のあるなし、重力などなど)の情報を受け取って遺伝子の働きを調節していることですが、その詳しい仕組みは研究の中心課題の1つとなっています。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2007-11-01
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