一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ジエチエーテルの作用

質問者:   高校生   みき
登録番号1452   登録日:2007-10-28
今サイエンス部の生物班でもみじなどを対象に色素について研究しているのですがそこでこんな疑問が実験中に浮かび上がったので質問したいと思います。
紅葉したいろはもみじを、磨り潰して出来たものをジエチエーテルに入れたらピンク色だったのが黄色になるのはどうしてなのか??
みき さま

モミジがピンク色に紅葉するとき合成される色素は主にアントシアニンですが、この色素は細胞の中にあるときは、液胞に分布しています。従って、アントシアニンの分子は水にとり囲まれた状態で存在しています。アントシアニンの色は液胞の中の水素イオン濃度(酸性度、pH)、さらにそこに溶けている金属イオンによって影響され、これは花の色の変化の原因になっています(本質問コーナーの回答を“花の色”のキーワードで検索すれば多くの例がみられます。例えば、質問登録番号1102への回答)。

葉をすりつぶした状態では、アントシアニン分子の周りはまだ水にとり囲まれているため、その色は変化しないと思いますが、葉をすりつぶしてこれにジエチルエーテルを加えると、アントシアニン分子の周りを取り囲んでいた水が排除され、そこにジエチルエーテルが入りこむことになります。アントシアニン分子はこの色素分子の色の基になる発色団とよばれる、疎水性の比較的高いアントシアニジンと、親水性の糖とからできています。水の分子は文字通り親水性ですので、水の中ではアントシアニンの親水性の高い、糖の部分を水がとり囲んでいます。ところが、ジエチルエーテルを加えて水の割合が非常に低くなると、糖の分子の周りをとり囲んでいた水がなくなります。しかし、疎水性(水に溶けない、水を排除する)の高いジエチルエーテルは親水性の糖の部分をとり囲むことはでませんが、水が余り取り囲むことのできなかった、アントシアニンの疎水性の高い発色団(アントシアニジン)のところを取り囲むようになります。これによって、発色団の電子配置が影響を受け、主に緑色の光を吸収して赤色に見えていたアントシアニンが、青色を吸収して黄色に見える形になったと考えられます。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2007-12-07
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