質問者:
中学生
さとみ
登録番号1456
登録日:2007-11-04
食品成分表を見ていて気付いたのですが、米は精白しているうちにどんどん灰分が失われていっています。みんなのひろば
植物の種子に含まれるミネラル
そば粉も内層粉と表層粉とではミネラルの量に差が出ています。
種子が中心部から外側まで同じような割合でミネラルが含まれているとしたら、そば粉の表層粉と内層粉のように外と内で約4倍の灰分量の差にはならないと思いました。
ミネラルは種子の外側に多く貯蔵される性質を持つのでしょうか?
もしそうだとしたら、それはなぜでしょうか?
さとみ さま
イネの種子(コメ)は食品としての面からのみ考えられがちですが、イネの穂から籾殻を除いた種子(玄米)をとり、カミソリで縦方向に切断し横断面をみると、1)発芽したときに葉や根になる胚芽、2)種子の(胚芽の部分以外の)外側をずっと取り囲んでいるアリュロン層とよばれる細胞層、そして3)アリュロン層に取り囲まれ種子の中心部の大部分を占める胚乳、の三つの主な組織が見られます。胚芽は種子が水に浸され発芽すると、イネの芽生えになる組織で、これが次の世代の葉や根となって成長していきます。これに対し、2、3)は、胚芽が葉や根となってミネラルを吸収でき、光合成できるようになるまで成長させるため胚芽に養分(ミネラル、炭水化物、アミノ酸など)を供給する役割をもっています。そのため、2,3)の組織はイネが発芽して、葉が光合成でき、根がミネラルを吸収できるようになれば消えてなくなります(プログラム細胞死)。
イネ種子の組織で、ミネラルはアリュロン層に最も多量含まれています。玄米を精白(種子の表面から細胞層を順次こすり取っていく)すると、種子の約10%の重さのアリュロン層に種子全体のミネラルの90%以上が含まれていることがわかります。種子のカリウム、マグネシウム、カルシウム、リン、鉄、マンガンなどの大部分がアリュロン層に含まれ、胚乳、胚芽にはあまり含まれていません。イネ種子の胚乳の主な成分はデンプンであり、タンパク質も含まれています。これらは胚芽が成長して根や葉が自立できるまでに必要な養分、エネルギーを供給するための材料となっています。胚乳のデンプン、タンパク質はそのままでは胚芽が利用できないため、例えば、デンプンはアミラーゼのような酵素によってブドウ糖などに分解されてから利用されます。胚乳のデンプン、タンパク質などの養分を胚芽が利用できる形にするために必要なアミラーゼ、プロテアーゼ、ペプチダーゼなどの酵素は、種子が吸水するとアリュロン層で合成され、これらの酵素によって胚乳の養分が胚芽や芽生えの組織が利用できる形となります。このように、種子の三つの組織はそれぞれ助け合い、光合成で成長でき、必要なミネラル(元素)を根から吸収できるイネの植物体を完成させます。
精白していないイネの玄米は黄褐色ですが、玄米から胚芽、アリュロン層を精白によって(こすり取った)白米が普通、食用になっています。このとき玄米の重量の10〜20%が“ぬか”としてり取り去られますが、玄米のミネラルの大部分がこの“ぬか”に含まれています。従って、白米(主として胚乳)のミネラル含量は玄米に比べ、非常に低くなります。ソバのような双子葉植物の種子は、イネのような単子葉植物の種子と異なり、胚乳がなく、その代わりに子葉(芽が出たときの双葉)が大きく、ここに葉や根を成長させる養分が含まれています。ソバの表層粉と内層粉とがどの組織に相当するかわかりませんが、恐らく、表層粉はイネのアリュロン層に相当するミネラルの多い組織に由来すると思います。
食品成分表から種子内部の植物生育に必要な元素(ミネラル)の分布がどうなっているか、疑問をもたれたことに感心しました。科学はどんなことでも疑問をもつことがその第一歩です。
イネの種子(コメ)は食品としての面からのみ考えられがちですが、イネの穂から籾殻を除いた種子(玄米)をとり、カミソリで縦方向に切断し横断面をみると、1)発芽したときに葉や根になる胚芽、2)種子の(胚芽の部分以外の)外側をずっと取り囲んでいるアリュロン層とよばれる細胞層、そして3)アリュロン層に取り囲まれ種子の中心部の大部分を占める胚乳、の三つの主な組織が見られます。胚芽は種子が水に浸され発芽すると、イネの芽生えになる組織で、これが次の世代の葉や根となって成長していきます。これに対し、2、3)は、胚芽が葉や根となってミネラルを吸収でき、光合成できるようになるまで成長させるため胚芽に養分(ミネラル、炭水化物、アミノ酸など)を供給する役割をもっています。そのため、2,3)の組織はイネが発芽して、葉が光合成でき、根がミネラルを吸収できるようになれば消えてなくなります(プログラム細胞死)。
イネ種子の組織で、ミネラルはアリュロン層に最も多量含まれています。玄米を精白(種子の表面から細胞層を順次こすり取っていく)すると、種子の約10%の重さのアリュロン層に種子全体のミネラルの90%以上が含まれていることがわかります。種子のカリウム、マグネシウム、カルシウム、リン、鉄、マンガンなどの大部分がアリュロン層に含まれ、胚乳、胚芽にはあまり含まれていません。イネ種子の胚乳の主な成分はデンプンであり、タンパク質も含まれています。これらは胚芽が成長して根や葉が自立できるまでに必要な養分、エネルギーを供給するための材料となっています。胚乳のデンプン、タンパク質はそのままでは胚芽が利用できないため、例えば、デンプンはアミラーゼのような酵素によってブドウ糖などに分解されてから利用されます。胚乳のデンプン、タンパク質などの養分を胚芽が利用できる形にするために必要なアミラーゼ、プロテアーゼ、ペプチダーゼなどの酵素は、種子が吸水するとアリュロン層で合成され、これらの酵素によって胚乳の養分が胚芽や芽生えの組織が利用できる形となります。このように、種子の三つの組織はそれぞれ助け合い、光合成で成長でき、必要なミネラル(元素)を根から吸収できるイネの植物体を完成させます。
精白していないイネの玄米は黄褐色ですが、玄米から胚芽、アリュロン層を精白によって(こすり取った)白米が普通、食用になっています。このとき玄米の重量の10〜20%が“ぬか”としてり取り去られますが、玄米のミネラルの大部分がこの“ぬか”に含まれています。従って、白米(主として胚乳)のミネラル含量は玄米に比べ、非常に低くなります。ソバのような双子葉植物の種子は、イネのような単子葉植物の種子と異なり、胚乳がなく、その代わりに子葉(芽が出たときの双葉)が大きく、ここに葉や根を成長させる養分が含まれています。ソバの表層粉と内層粉とがどの組織に相当するかわかりませんが、恐らく、表層粉はイネのアリュロン層に相当するミネラルの多い組織に由来すると思います。
食品成分表から種子内部の植物生育に必要な元素(ミネラル)の分布がどうなっているか、疑問をもたれたことに感心しました。科学はどんなことでも疑問をもつことがその第一歩です。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2007-11-13
浅田 浩二
回答日:2007-11-13