一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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光合成速度と水の関係

質問者:   教員   san
登録番号1460   登録日:2007-11-07
はじめまして。高校で生物を教えおります。
授業の準備をしていてふと疑問に思ったのですが
「光合成と環境要因」の部分で出てくるのは
光(強さ・波長)、二酸化炭素濃度、温度が光合成速度に与える影響のみで、
水が与える影響については触れておりません。
調べても良い文献が見つからず、こちらのページにたどり着きました。
お手数ですが教えていただければ幸いです。
san さん

ご質問をありがとうございました。
ご存知のように、光合成は下記の式で表されます。
水 + 二酸化炭素 + 光エネルギー -→ 有機化合物 + 酸素
この式から考えると、水などの反応成分の量が限定要因(律速要因)となっている場合には、その量の変化が光合成の速度(二酸化炭素の取り込み速度、酸素の発生速度、有機化合物の蓄積速度)に影響を与えることになる筈です。実際、質問文に書かれているように、二酸化炭素や光(強さ・波長)については、このような状況を作り出すことは容易です。ところが、水については、これを限定要因とすることは極めて困難です。言うまでもなく、水は光合成反応の基質(電子供与体)として不可欠であり、同位元素を使った実験などから、光合成の過程で発生する酸素はすべて水に由来することが確かめられています。しかし、細胞の営む光合成以外の諸活動にも水の存在が不可欠であるため、細胞内には大量の水が含まれています。このため、細胞内の水の量が光合成の反応に律速的である条件を作り出すことは困難です。ただし、乾燥などによる水不足の条件下で、植物の光合成の機能が低下することは良く知られてい
ます。

なお、光合成の反応は、初期過程としての光化学反応を除いては、温度依存的ですので、温度が光合成速度に影響を与えるような条件をつくることは容易です。
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2007-11-13
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