質問者:
会社員
トモダッチ
登録番号1476
登録日:2007-11-20
土日の家庭園芸を趣味にしているサラリーマンです。園芸に付随して最近は特に安全安心を心がけておる中、健康志向とも有りお茶にも興味を抱いております。そこで、お茶の書籍で少々調査にかかりましたところ、お茶の旨み(甘み)成分はテアニンにある。そのテアニンをよりよく引き出す栽培方法が課題、とされ「茶に施用される肥料成分のうちアンモニア態窒素は、土壌中で酸化され硝酸に変化するのだが、それがおこりにくいように覆いをかぶせることによってテアニン含量の高いお茶を作ることができる」。とありましたが、これは土壌表面を覆うことなのでしょうか?また他参考資料としては、「日光を遮る事でテアニン含量を安定させる」、ともありましたが双方を理解してよいのでしょうか? しかし以上の説明ですと前者は土壌の化学性からいきなり植物の生理機能へととんでしまっていますのでその間の過程を掌握したいのです。後者の理屈に関しましてももう少々詳しい説明をと思うのですが。みんなのひろば
お茶の旨み(甘み)を引き出す方法
宜しくお願い致します。
トモダッチ さま
チャの葉を収穫して直ちに加熱処理(短時間蒸)を行い、乾燥して製品となる緑茶は、加熱処理をせず収穫した葉をそのまま発酵させて製品となる紅茶、半発酵茶であるウーロン茶などと異なり(本質問コーナー登録番号0740の回答参照)、収穫した茶の葉の成分が直接、味に関係するため、茶の栽培条件、特に、収穫時期の光条件が大きく品質に大きく影響します。
高級緑茶とされる玉露、抹茶は、春、チャ樹の新芽が出る時期から、約1ヶ月間、チャ樹を寒冷紗などで覆った遮光栽培で成長した新芽が、一方、煎茶は、このような覆いをしない露光(露地)栽培で成長した新芽が、原料となります。遮光栽培(太陽光照度の65〜95%を遮光)によって光合成速度は低くなりますが、新芽の成長期は、前年にチャ樹に蓄えられていた養分によって成長することができます。しかし、葉の緑の色素、クロロフィールの合成には光が必要なため100%遮光すれば緑の葉にはなりませんが(黄化葉)、普通のチャ樹の遮光栽培で、葉のクロロフィール含量は露光栽培に比べかえって高くなります。
露光栽培で新芽は太陽光を直接受けることになり、光合成をすることができますが、植物はこのときに光によって生ずる活性酸素を消去して葉が“日焼け”をしないようにすることが必要です。ヒトの皮膚は海水浴で半日でも太陽光を浴びれば“日焼け”することを考えれば、植物の葉が光合成によって成長するためには、“日焼け”に対する備えが必要です。
遮光栽培と露光栽培で成長した新芽の葉の成分を比較すると、露光栽培の葉にはビタミンC(アスコルビン酸)、タンニン(ポリフェノール)、カテキンの含量が高く、一方、遮光栽培の葉にはご質問にあるテアニン(γ-glutamylethylamide), その同族体(γ-glutamylmethylamide)、グルタミン酸、アスパラギン酸含量が高くなります。煎茶の原料となる露光栽培の葉に多い成分は、太陽光によって生ずる活性酸素による“日焼け”を防御するための成分であり、これらは抗酸化成分として食品に重要な成分です。一方、玉露、抹茶の原料となる遮光栽培の葉に多い成分は前年に根で合成され、蓄えられていた貯蔵成分が春に新芽の成長のために移動(転流)してきたと考えられますが、太陽光の強い光が遮られ、活性酸素が余り生じないため露光栽培の葉に比べれば余り抗酸化成分を合成する必要がなく、そのまま残っていると思われます。実際に、露光栽培の葉ではテアニンからカテキンが合成されます(小西 茂毅(編著)日本茶の魅力を求めて、大河書房(2005))。
以上のように、遮光栽培した葉には呈味性のあるアミノ酸、アミド含量が高く、渋みのあるタンニンなどが低くなりますが、これに対し、露光栽培した葉には栄養成分として重要な抗酸化成分の含量が高くなります。旨み(甘み)は食品の重要な評価項目ですが、これらは一成分のみでなく多くの成分の量、相対的な量比などによって影響されるため、テアニンのみでなく他の成分を含めて総合的に判断することが必要でしょう。
遮光すれば上に述べたような機構でテアニン含量が高くなりますが、ご質問の健康志向のためには、抗酸化成分の多い露光で栽培した葉を原料とする煎茶の方が優れていることになります。しかし、抗酸化成分を全て緑茶から摂取する必要はなく、野菜、果物から摂取すれば、玉露だけを楽しんでいても問題はないでしょう。
チャ樹も他の植物同様、根や葉でアミノ酸、アミド合成のために窒素肥料が必須ですが、例えば、硫安を施肥するとアンモニウム・イオンが土壌微生物で酸化され硝酸イオンとなって土壌から失われます。その結果、チャ樹が窒素欠乏になればテアニンを初めとする全ての窒素を含む細胞成分ができなくなります。わらの土壌への施用は、土壌の有機成分を補給しこれによって土壌から窒素が失われるのをある程度防ぐのに有効と思われます。
チャの葉を収穫して直ちに加熱処理(短時間蒸)を行い、乾燥して製品となる緑茶は、加熱処理をせず収穫した葉をそのまま発酵させて製品となる紅茶、半発酵茶であるウーロン茶などと異なり(本質問コーナー登録番号0740の回答参照)、収穫した茶の葉の成分が直接、味に関係するため、茶の栽培条件、特に、収穫時期の光条件が大きく品質に大きく影響します。
高級緑茶とされる玉露、抹茶は、春、チャ樹の新芽が出る時期から、約1ヶ月間、チャ樹を寒冷紗などで覆った遮光栽培で成長した新芽が、一方、煎茶は、このような覆いをしない露光(露地)栽培で成長した新芽が、原料となります。遮光栽培(太陽光照度の65〜95%を遮光)によって光合成速度は低くなりますが、新芽の成長期は、前年にチャ樹に蓄えられていた養分によって成長することができます。しかし、葉の緑の色素、クロロフィールの合成には光が必要なため100%遮光すれば緑の葉にはなりませんが(黄化葉)、普通のチャ樹の遮光栽培で、葉のクロロフィール含量は露光栽培に比べかえって高くなります。
露光栽培で新芽は太陽光を直接受けることになり、光合成をすることができますが、植物はこのときに光によって生ずる活性酸素を消去して葉が“日焼け”をしないようにすることが必要です。ヒトの皮膚は海水浴で半日でも太陽光を浴びれば“日焼け”することを考えれば、植物の葉が光合成によって成長するためには、“日焼け”に対する備えが必要です。
遮光栽培と露光栽培で成長した新芽の葉の成分を比較すると、露光栽培の葉にはビタミンC(アスコルビン酸)、タンニン(ポリフェノール)、カテキンの含量が高く、一方、遮光栽培の葉にはご質問にあるテアニン(γ-glutamylethylamide), その同族体(γ-glutamylmethylamide)、グルタミン酸、アスパラギン酸含量が高くなります。煎茶の原料となる露光栽培の葉に多い成分は、太陽光によって生ずる活性酸素による“日焼け”を防御するための成分であり、これらは抗酸化成分として食品に重要な成分です。一方、玉露、抹茶の原料となる遮光栽培の葉に多い成分は前年に根で合成され、蓄えられていた貯蔵成分が春に新芽の成長のために移動(転流)してきたと考えられますが、太陽光の強い光が遮られ、活性酸素が余り生じないため露光栽培の葉に比べれば余り抗酸化成分を合成する必要がなく、そのまま残っていると思われます。実際に、露光栽培の葉ではテアニンからカテキンが合成されます(小西 茂毅(編著)日本茶の魅力を求めて、大河書房(2005))。
以上のように、遮光栽培した葉には呈味性のあるアミノ酸、アミド含量が高く、渋みのあるタンニンなどが低くなりますが、これに対し、露光栽培した葉には栄養成分として重要な抗酸化成分の含量が高くなります。旨み(甘み)は食品の重要な評価項目ですが、これらは一成分のみでなく多くの成分の量、相対的な量比などによって影響されるため、テアニンのみでなく他の成分を含めて総合的に判断することが必要でしょう。
遮光すれば上に述べたような機構でテアニン含量が高くなりますが、ご質問の健康志向のためには、抗酸化成分の多い露光で栽培した葉を原料とする煎茶の方が優れていることになります。しかし、抗酸化成分を全て緑茶から摂取する必要はなく、野菜、果物から摂取すれば、玉露だけを楽しんでいても問題はないでしょう。
チャ樹も他の植物同様、根や葉でアミノ酸、アミド合成のために窒素肥料が必須ですが、例えば、硫安を施肥するとアンモニウム・イオンが土壌微生物で酸化され硝酸イオンとなって土壌から失われます。その結果、チャ樹が窒素欠乏になればテアニンを初めとする全ての窒素を含む細胞成分ができなくなります。わらの土壌への施用は、土壌の有機成分を補給しこれによって土壌から窒素が失われるのをある程度防ぐのに有効と思われます。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2012-08-25
浅田 浩二
回答日:2012-08-25