一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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斑入り麦の斑はなぜ消えるのか?

質問者:   教員   sho
登録番号1477   登録日:2007-11-21
初めまして。農業高校で草花を担当しているものです。

初夏を飾る草花として斑入りの麦を栽培しようとしています。
過去にも何度か栽培したことがあるのですが、出穂した後に斑が消えてしまいます。
斑が消えないように栽培するにはどのような注意が必要なのでしょうか?

なお、生徒と一緒に栽培実験をやりたいと思っているのですが、どのような実験系が考えられるでしょうか?

栽培方法は、屋外でプランターに直まきし、CDU適量を約20日おきに施肥しています。
sho さん

お待たせしました。
ご質問には、岡山大学資源生物科学研究所で斑入りの研究に取り組まれている坂本亘先生から回答をいただきました。ご参考にして下さい。なお、本質問コーナーには、過去にも斑入りに関連する幾つかの質問があり、坂本先生からの回答などが用意されておりますので、そちらの方もご参考にして下さい。

麦の斑入りを栽培されているということですが、オオムギでしょうかコムギでしょうか。
私は単子葉植物ではオオムギとイネの斑入り突然変異体を扱ったことがあります。経験からいうと、斑入りの形質発現は温度に強く影響されることが多いです。例えば、北海道で斑入りがきれいに出ていた変異体を九州に持ってきたらうまく斑入りが出ないといったようなことがあります。つまり、低温にする(もしくは、昼夜の温度差を大きくする)と斑入りがきれいに出ることがあるかもしれません。逆もあるかもしれませんが、一般には、低温で斑入りが強く出る変異が多いように思います。また、変異によっては光が強いほど斑入りが出ることがありますが、そのような斑入りは生育自体が悪いので生存率が下がります(光に弱いから斑入りになっているわけです)。
施肥との関係はよくわかりません。どのような斑入りの麦なのかわかりませんが、温度条件を変えた栽培実験など、試されたらどうでしょうか。可能であれば、春播きよりも秋播きの方が、斑がきれいにでるかもしれません。斑入りは変異を持っているので(殆どの場合は、光合成活性の低下が起こります)、野生型と同じように育てるのは無理です。かつ、低温にすれば生育が遅れるので、斑入りをきれいに育てるには必然的に時間がかかるでしょう。

それから、出穂後に斑入りが消えるということですが、1年生植物の遺伝的な突然変異で起こる斑入りの場合は、同じ一枚の葉で斑入りが回復することはほとんどありません。そうでなければ、斑入りはもともと不安定なはずです。同じ葉の斑入りが回復するのであれば、施肥などの栄養条件か、病害菌・ウイルスなどが関係する可能性もあります。これとは違い、一度出た斑入りの葉はそのままで、後から出てくる葉の斑入りがなくなるのであれば、高温の影響かもしれません。

坂本 亘(岡山大学資源生物科学研究所)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤公行
回答日:2007-12-07